患者との会話、自動で電子カルテ化 AI活用、マスク越し早口でも音声認識

    医療機関向けの電子システム開発を手掛けるベンチャー企業のkanata(東京都中央区)は、音声認識技術や人工知能(AI)で電子カルテの作成を省力化する診察支援システム「kanaVO」を開発した。来年1月にも販売を始める。一般的に医師は電子カルテ作成に1日2時間以上を費やしており、これが長時間労働の要因となっている。診察支援システムの導入を働き掛け医療機関の〝働き方改革〟を後押しする。

    「kanaVO」は、パソコンやスマートフォンなどで利用できるクラウドサービスとして提供する。診察時の医師と患者の会話をマイク機能で音声認識した上で文書化する。さらに、独自開発したAIを使ってこの文書から雑談を省き、体温や血圧、病名など医療に関する部分を抽出して要約文書を作成。医師はこれをコピーして電子カルテに貼り付けるだけで、入力作業が完了する。

    「文書化後の誤字や脱字の確認に追われることのないよう、マスク越しの早口でも高精度で音声認識できる技術を採用している。AIによる文書の要約機能は、業界でも極めてめずらしい」(滝内冬夫代表取締役)という。

    利用料金は毎月5時間まで無料。その後は100時間まで2万5000円と、中小規模の病院や診療所でも利用しやすい安価な料金設定とした。

    デジタル化を通じた医療分野の効率化には、大手メーカーなども本腰を入れ始めている。

    NECは医療事務システムや電子カルテシステムなどを50年以上にわたって提供してきた老舗だが、11月からは電子カルテの作成支援やデジタル問診、オンライン診療も盛り込んだクラウドサービス「MegaOak(メガオーク)」を提供するなど、医療現場の効率化支援事業を強化している。

    同社も音声認識技術を活用したカルテや看護記録の入力支援に注力する。「kanaVO」のようなAI要約機能は搭載していないが、「看護記録の入力にかかる時間を手入力の半分程度に短縮できる」(広報室)としている。

    オンライン診療の支援サービスは月額14万8000円から、音声認識技術を活用したカルテや看護記録の入力支援サポートサービスは月額16万1200円からで、主に大学病院など大規模な医療機関の開拓を進める。令和8年3月までに国内200施設の導入を目指すという。

    医療現場では、人口減少に伴う労働力不足や新型コロナウイルス対策で業務負担が増大しており、デジタル化などを通じた省力化、医療従事者の働き方改革が強く求められている。

    (青山博美)


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