2001年―デフレ時代に百“味”繚乱! ラーメン激戦区・高田馬場

ゼロ年代初頭、外食シーンをデフレスパイラルが翻弄する

ここで当時のニッポン経済を振り返ろう。バブル崩壊の1991年からジャスト10年―2001年3月16日、月例経済報告で「現在の日本経済は緩やかなデフレにある」との見解が発表された。全国消費者物価指数が前年まで2年連続のマイナスになったことを受け、戦後初のデフレ宣言が出されたのである。

同年3月、牛丼チェーン『すき家』は牛丼価格を400円から280円の大幅値下げを発表し、『吉野家』も追随。前年に390円から290円に値下げしていた『松屋』と合わせ、牛丼価格戦争が勃発した。コンビニチェーンはおにぎりを値下げし、弁当業界にも低価格バトルは波及。経済全体で物価が下落して企業は利益を出せず、給料や法人交際費の減少もあって消費マインドは悪化。さらにモノが売れなくなる――いわゆるデフレスパイラルの焦燥感が、フードビジネスを終わりなき値下げ競争へと駆り立てていった。

シビアな状況下、最も割りを食ったのは外食産業だ。97年の消費税率引き上げ(3%→5%)や金融機関の相次ぐ破綻を受け、家計が引き締めに傾斜する中、デパ地下惣菜やコンビニ弁当といった中食市場との競合が激化。外食率は97年の37.8%をピークに緩やかに低下する。さらに、2001年にはBSE(牛海綿状脳症)、いわゆる狂牛病問題が発生して米国産牛肉を扱う外食チェーンに大打撃。その後も食品偽装・偽表示問題、鳥インフルエンザなど食の安全を揺るがす問題が次々に起こった。97年には16.8兆円にまで伸びた外食産業市場は2003年には14.7兆円(97年比マイナス12.6%)へ縮小するに至る。

そこで、ラーメン業界の風向きは!? 前述の通り、外食市場は景気との相関が強かったが、日本社会の成熟で「食」が情報として消費される傾向はより顕著に。ラーメンをはじめとするエンターテインメント・フードは不景気も何のその、むしろ、情報チャネルの拡大に伴ってムーブメントの勢いは増す一方だった。

ゼロ年代の首都圏レジャー・エンターテインメントを語る上では、活況を呈した情報誌の乱立は避けて通れないだろう。1990年に角川書店(現KADOKAWA)が『東京ウォーカー』を創刊。既存『ぴあ』としのぎを削る中、1995年には『ポタ』(小学館)、97年には『キャンドゥ!ぴあTOKYO』(ぴあ)、『TOKYO1週間』(講談社)が登場。先行する女性情報誌『Hanako』がイタ飯やティラミスといったファッションフードをプレゼンする中、各誌は夜景やドライブデート、ラブホテル、食べ放題に個室居酒屋など、欲望に立脚した若者向け情報をタイムリーに発信。20~30代独身者の支持を得ていく。そこでキラーコンテンツの一角を占めたのが「ラーメン」だ。当時はシーズンごとに新たな味、スープがフィーチャーされ、気鋭のニューカマーも陸続と登場。地方からも職人たちが成り上がりロードを駆け上がる。ウィークリーのトピックを熱望する情報誌にとって、ゼロ年代の首都圏ラーメンは宝の山だった。

テレビ局も情報誌をネタ源にラーメン特集を組み、視聴者はオンエア直後から紹介店に行列をつくった。それがラーメン業界の注目度を上げ、さらなる新味・新店が情報誌に掲載されていく―デフレスパイラルとは真逆の情報スパイラルアップが業界を熱く盛り上げる。その熱気の到達点が、2002年の大晦日に放送された「史上最大!全国民が選ぶ美味しいラーメン屋さん 列島最新ベスト99」(日本テレビ)。この番組で全国1位に輝いた店こそ、前出『俺の空』である。オンエア直後の2003年初頭から、この豚骨魚介ラーメンの注目度は急上昇。高田馬場駅戸山口から店まで連なる長蛇の列が。最盛時には並んでから食べるまで3時間以上もかかったという。かくして、高田馬場は最もホットな「ラーメン激戦区」になり、さらに多くの店舗が出店を志すようになったのだ。

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