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なぜ日本企業は稼ぐ力が弱いのか? 生産性は先進国28位…国力低下回避のカギは

賃上げ実現の旗を掲げる岸田文雄首相に対して、根本的な解決策を求める声が強まっている。政府は賃上げ税制などの手を打ち始めたが、賃上げに不可欠とされる労働生産性に関しては、日本は先進国内で28位という低水準。働き手の数の割には利益を出せない経済の体質改善のため、専門性が高い人材の育成や登用に重きを置き、日本企業のイノベーション力を高めるべきだとも指摘されている。一方、優秀な人材を高い報酬で獲得する施策を進めれば、労働者の間での経済格差が広がる恐れもちらつく。ただ、労働生産性の低さを放置することは長期的な国力低下につながる懸念もあり、改革への一歩を踏み出す決意も求められる。

日本の労働生産性の低さを解消するには報酬体系の見直しも必要だとされる(Getty Images)※画像はイメージです
日本の労働生産性の低さを解消するには報酬体系の見直しも必要だとされる(Getty Images)※画像はイメージです

■賃上げ税制も一過性なら「元の木阿弥」

「あらゆる手段を講じて企業が賃上げをしようと思える雰囲気を醸成することが重要です」。岸田首相は12月21日の記者会見で、自らが目指す新しい資本主義の柱として賃上げを重視する方針を改めて示した。

岸田政権は2022年度の税制改正で、給与総額を前年度より3%以上増やした大企業と、1.5%以上増やした中小企業の法人税を軽減する施策を盛り込んだ。介護や保育、幼児教育などでの賃上げも政府が主導して取り組むという。

しかし経済界からは「今回の税制で優遇されたとしても一過性のものであれば元の木阿弥になる」(経済同友会の桜田謙悟代表幹事)との見方が大半だ。政府が賃上げの旗を振ったところで、企業が恒久的に賃上げを続けられる環境が続かなければ賃上げは実現しないとする声は多い。

■イノベーションを起こせる人材が少ない日本

日本で賃上げが進まない理由のひとつとされるのが、日本企業の稼ぐ力の弱さだ。日本生産性本部が経済協力開発機構(OECD)のデータを元にまとめた報告書「労働生産性の国際比較」によると、2020年の日本の1人当たり労働生産性は7万8655ドル。OECD加盟38カ国中28位で、1970年以降で最も低い順位となった。経済発展が遅れてきたポーランドやエストニアといった東欧・バルト諸国と同水準で、西欧諸国からも水をあけられている。

この報告書では国内総生産(GDP)を就業者数で割って1人当たり労働生産性を算出している。日本は働いている人の数の割には企業が利益を上げられていない形だ。労働生産性を上げるには、「働く人の能力向上や経営能力の改善、様々なイノベーションなど」(同報告書)が必要で、単に税制をいじるだけでは、賃上げするだけの利益は上げられないといえる。

日本生産性本部の木内康裕上席研究員は労働生産性を上げるための施策について、「人材への投資」の重要性を指摘する。「日本ではイノベーションを起こせるような専門性の高い人材が少なく、優秀な外国人が日本で働いてくれる状況も整っていない。女性人材の活用でもパートやアルバイトではなく、より生産性の高い仕事で活躍できなければならない」との立場だ。

日本生産性本部が米大手シンクタンクのブルッキングス研究所と行った比較研究によると、日本の修士号・博士号取得者の割合は数%で、10%を超える米国やドイツよりも大幅に少ない。大学院を修了した男性の所得は高卒男性よりも47%高いが、米国(72%)、ドイツ(59%)からは見劣りし、高い専門性を身に着けるためのインセンティブが弱い状況だ。国際的な研究開発に基づく国際共同特許(GCP)も少なく、企業の研究開発に対する政府の支援や手続きの簡素化なども求められる。

■低い労働生産性にはある事情も

一方、能力がある人材を高報酬で集めることになれば、賃金格差が広がることは避けられない。企業が優秀な人材に賃上げを行うことで、成果を上げられない人材の賃金を抑制したり、雇用をカットしたりする要因になるとの筋道も成り立つ。


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