「日本の劣位は明確」
香港市場に投資されている資産は1兆ドル(約114兆8000億円)を超え、半分は中国本土からの資金とされる。日本も国際金融センターになるべく、香港の海外金融機関や金融人材の誘致に力をいれているが、はたして思惑通り進むかどうかは不明だ。「中国ビジネス、香港マネーという観点からは、英語と中国語の双方が通用するシンガポールに比べ、それらの言語を話す人が限られる日本の劣位は明確」(宮本さん)だからだ。
加えて、シンガポールは税制面でも優位に立っている。宮本さんによると、シンガポールの法人税は最大17%。所得税は最大22%で、贈与税・相続税はかからない。そのうえ、株の売却益などキャピタルゲインや配当のインカムゲインも非課税だ。英語と中国語の両方が公用語になっていることに加え、政治的にも安定していることから、シンガポールに資金が集まっているのだという。
宮本さんは「家業は3代でつぶれるといわれています。企業の生存率は2代目で30%、3代目では9%です。相続税が高い、子が親の事業を継がない、時代の変化に対応できないなど3代でつぶれてしまう理由はさまざまですが、富裕層にとっていちばん大きいのは相続税と贈与税です」と語る。
資産運用だけでなく、信託(トラスト)などを使った事業承継や海外への移住支援、IPOやM&Aのサポートに至るまで顧客のあらゆるニーズに応えるファミリーオフィス。超富裕層のある一族の資産だけを管理するシングルファミリーオフィスから、投資運用を行わない税理士らが提供するようなファミリーオフィスサービスなど形はさまざまだが、いずれにしてもまだ、日本ではほとんど馴染みのない存在といえる。
さはさりながら、かなりまとまった資産がある人であれば、ファミリーオフィスに預けるのも手だろう。宮本さんは「お客さまの立場に立って、お客さまにとって最も良い方法を考えていきます」と話した。