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「おせち」商戦の盛り上がりが寿ぐ日本の未来

今年のお正月は、商業施設も元日からオープンのお店が増え人出も結構あり、少しずつ以前の日常が戻ってきた印象を感じました。それにしても振り返れば、昭和のある時期までは三が日に開けているお店など皆無で、街は初詣に行く着物姿の人だけで新年という印象そのままの静謐で神聖な雰囲気で満たされていたように思うので、隔世の感があるというものです。

でもこれでも、家で過ごす生活スタイルが長く続いたことで、従前に比べてみれば外食やショッピングに出る機会自体が減った方も多いはずなので、お正月は家族や親せきとゆったり過ごす時間も多かったに違いありません。そして自宅で過ごすお正月と言えば、やはり「おせち」は欠かせませんが、昨年末ますます賑やかに感じたのが「おせち」商戦の盛り上がりでした。

高級食材を日持ちさせながら美味しく加工する技術は料理人腕の見せ所(写真筆者)
高級食材を日持ちさせながら美味しく加工する技術は料理人腕の見せ所(写真筆者)

「おせち」の起源は、五節句料理の1つということで、平安時代に宮中で行われた「お節供」の行事の際に神に供え、宴の際に食した料理に由来するそうです。江戸時代後期に庶民がこれを生活に取り入れ広がり、特におめでたいお正月にふるまう御馳走が「おせち料理」として今に至るとのことです。 (「高島屋HP 2022おせち料理」より

節句を祝うという意味合いで、特別感のある非日常的で贅沢な食材を使い、見かけの雅さにも工夫を凝らされたお料理であることが身上です。特に、めでたいことを重ねるという意味合いで、基本は贅沢にも四段の重箱に入っておりますが、やはりこのお重を一段ずつ上げていく際のなんとも言えなくワクワクする感じは、思わず「寿(ことほ)ぐ」という普段あまり使わない言葉を使いたくなります。

それにしても感心してしまうのは「おせち」が、専業主婦が多かった時代、年中無休で重労働も多かった主婦業でせめて正月ぐらい三食の用意から解放されるための保存食の意味合いが多分にあったという生活の知恵でもあります。一石二鳥と言いましょうか、すべてに合理性と気の利いた工夫があった江戸生活者のアイデアは今でもまったく新鮮である好事例と感じます。

“インスタ映え”時代が「おせち」を再発見

でも今や1月1日からであってさえも、外食、出前、コンビニで中食と何でもありの時代。

まして、専業主婦の方の比率は年々低下してきており、おせちの位置づけ自体が変わってきている家庭が多いこともまた事実です。逆に言えば、元旦に発信された多くの方のSNSにそれぞれの趣向が凝らされた「おせち」が紹介され、特に一部芸能人の方の贅を究めた何重段の「おせち」などは、インスタ映え時代にますますその祝祭的なコンセプトに純化したような「おせち」の現代的再定義とさえ感じるような賑やかさでした。

やはり誰にとってもお正月らしい豪華さや華やぎを感じるのに、今の時代であっても「おせち」を奮発するのは悪くない選択に違いありません、いわゆる“ハレ”を感じるのにこれほどピッタリなものもありません。とにかく外国の方が良くびっくりすると言われる「幕の内弁当」、「小さいスペースに宇宙を表現してしまうかのような緻密さと豊穣」精神の極みが「おせち」にも貫かれています。やはり一年に一度、時代は変われども多くの人にとって日本の伝統的なものを最も身近に感じる日であるだろうお正月に、いかにも「おせち」は相応しい選択と言うべきでしょう。


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