万博効果2兆円に2つの懸念 誘致遅れと資材高騰

    令和7年4月に予定される大阪・関西万博の開幕に向け2つの懸念が浮上している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外からのパビリオン誘致が進んでいないことと、資材価格の高騰で施設の建設費が大きく膨らむ恐れがあることだ。この結果、万博の開幕が遅れたり規模が小さくなったりすれば、最大2兆円と見込まれる経済効果は〝絵に描いた餅〟になる。

    大阪・関西万博の会場となる「夢洲」=昨年12月23日午後、大阪市此花区(本社ヘリから、竹川禎一郎撮影)
    大阪・関西万博の会場となる「夢洲」=昨年12月23日午後、大阪市此花区(本社ヘリから、竹川禎一郎撮影)

    「今年は万博の準備にオールジャパンで対応しなくてはならない。来年慌てても開幕には間に合わない」。関西経済連合会の松本正義会長は今月4日、大阪市内で、記者団に危機感をあらわにした。府市と関西財界による年頭あいさつ後の発言で、新年を祝う場での〝苦言〟は異例だ。

    万博の会場は人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)。パビリオンに関しては、国内外の民間企業・団体用に9区画が用意されている。日本企業ではパナソニックや三菱、住友グループの出展が明らかになっており、「全区画を埋める数の企業・団体が手を挙げたとみられる」(関係者)。

    一方、海外の各国政府によるパビリオン出展は誘致が遅れている。日本政府が掲げる150カ国25国際機関の目標に対し、これまで出展を表明したのは72カ国6機関にとどまっている。

    背景には、新型コロナで誘致活動が行えていないことがある。昨年12月11日にドバイ万博で開催された「ジャパンデー」では、日本から万博担当相や大阪府知事、関西財界トップらが訪問して誘致を働きかける計画だったが見送られた。

    設計作業を経てパビリオンの建設工事が始まるのは令和5年度の初めから。誘致が遅れれば、工事スケジュールも後ずれする。誘致目標に届かなくても開幕できるが、それだけ万博の規模が小さくなって客を呼ぶ魅力が減り、入場者数や入場料収入の減少につながる。パビリオンの出展国からの施設利用料なども想定を下回る可能性がある。

    一方、会場建設に必要な木材や鉄鋼など資材価格の高騰も懸念材料だ。政府は初め会場建設費を約1250億円と試算していたが、会場デザインの変更などを受け、2年末に1850億円に引き上げた。民間企業がその3分の1を負担している。

    今後、資材価格の値上がりが続けば建設費がさらに膨らみかねないが、「また民間に負担しろというのは無理」(松本氏)。資材が値上がりし、購入する量が減るなどすれば、やはり施設や万博の規模が小さくなることになりかねない。

    経済産業省の試算では、見込まれる万博の来場者数は約2800万人、建設や運営、消費を通じた経済波及効果は2兆円に達する。だが、予定通りのスケジュールや規模で開催されなければ、効果が限定されることは避けられない。

    政府関係者がみずから海外に渡航し、誘致を働きかけるのは難しく、期待されるのは、各国の支店などを通じて現地の企業や政府とパイプを持つ日本企業からの働きかけだ。大阪万博の企画立案に関わった大阪府立大の橋爪紳也特別教授は「各国政府のパビリオン出展には現地企業の協賛が不可欠。日本の企業関係者からのアプローチは意味がある」としている。(黒川信雄)


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