「ポッドキャスト」旋風やまず 「忘れられたメディア」コロナで突然流行

    パソコンやスマートフォンで聞ける無料の音声コンテンツ「Podcast(ポッドキャスト)」が、若年層を中心に流行している。20年近い歴史があるものの、注目を集めることはなく「忘れられたメディア」となっていたが、コロナ禍の巣ごもりが追い風となり、一足早く流行した動画の視聴に疲れたユーザーらを取り込んだとみられている。ラジオに比べ短い番組が多く、家事などをしながら短時間で聞ける手軽さがその魅力だ。(道丸摩耶)

    ポッドキャスト番組の充実に力を入れるニッポン放送では昨年10月、月間ダウンロード数が初めて1千万回を突破した。同社の濱原晋介デジタルビジネス部長は「それまでは月間300万回ほどだったが、コロナ禍で急増した。令和2年の緊急事態宣言の時期から伸び始め、3年も好調が続いた」と語る。

    特に人気なのは、看板番組「オールナイトニッポン」のパーソナリティーらによるポッドキャストだ。「任天堂対ソニー」「マクドナルド対バーガーキング」など企業間競争を取り上げた米国のポッドキャスト番組の日本語版などのオリジナル番組も人気で、提供する62種のポッドキャストのうち過半数はラジオ番組関連、残りはオリジナルだという。

    ポッドキャストには、エンターテインメントのほか語学学習、ニュースなど、企業や個人が発信する幅広いジャンルの番組があり、いつでも選んで好きな時間に聞くことができる。

    複数のサイトやアプリで楽しめるため利用者数や番組数の全体の統計はないが、多くの利用者を持つ音楽再生サービス「Spotify」で昨年もっとも聞かれたポッドキャストは、同サービスのオリジナルで人気アニメ「呪術廻戦」の声優トーク番組だった。ポッドキャスト先進国の米国では「ニューヨークタイムズ」の記者がニュースを解説する番組も人気だ。

    音楽をはさむことが多いラジオとは異なり、内容はトークが中心で数分~数十分の番組が多い。実は20年近い歴史があり、日本ではTBSラジオなどが力を入れていた。しかし、利用者が伸び悩み収益化も難しいことから、一時は「忘れられたメディア」になっていた。

    ところが、コロナ禍で状況が一変。スマートフォンやワイヤレスイヤホンの普及も追い風となった。画面を見続ける必要がある動画に疲れたユーザーの受け皿となっただけでなく、「トークなら常に新しい内容が提供できる」(濱原氏)と毎日内容を更新できるのも魅力だ。ラジオ局の強みが生かされるため、J-WAVE、文化放送、TOKYO FMなども続々と番組を制作している。

    利用者と番組数の増加に伴い、広告収入も増えている。「番組を選んで聞く熱心な利用者が多く、何人が聞いたかも分かる。広告を出す魅力的なコンテンツになっている」と、広告代理店関係者も変化を感じている。

    コロナ禍が続いた令和3年は、iPhoneなどで聞く音声SNS「クラブハウス」やツイッターの会話機能「スペース」など、さまざまな音声メディアが流行した。〝耳〟の争奪戦が激しくなる中、好きなジャンルの番組をいつでも短時間で聞けるポッドキャストの人気はまだ続きそうだ。


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