筆者は常々、生徒本人の意志・決心を最優先すべきと考えているので、Yさんに同調しつつも、「今決めなくていいんじゃないですか? 来月もまだ模試がありますし。その結果も踏まえて、お正月明けにご家族で話し合われて最終判断されればよいのでは?」「次の模試の結果が出た際に、必要そうであれば、もう一度お話ししましょう」と締めさせてもらった。
するとその数日後、お母さんから電話が入った。表向きの主旨は、模試の結果に関する意見交換だったのであるが…。面談した日の夜だか翌日だかに、親子3人で、どちらを受けるか話をしたという。お母さん曰く、「その後3人で話をした時に、本人がこう言ってました。『お父さん、迷ってたの? 僕は全然迷ってないよ。M中学を受けるんだから』と」。
筆者としては、心中でガッツポーズである。2021年の春からこの生徒のいるクラスを担当し、ずっとボーダーラインのちょっと下にいる感じで、でもしっかり努力はしていて、授業中もよく目の合う、是非とも受かってほしい生徒の1人であり―。
結果よりも大事なこと
そして、改めてつくづく思った。親も講師も、受験する本人の意志を軽んじたり、決心を揺るがせたりしてはならないと。結果がどうであれ、本人に後悔させないことが最も大事なところである。たとえ結果が振るわなかったとしても、次に活かせばいい。
もう30年以上遡るが、社内に田坂広志氏をお招きしたミニ講演会での一言が今も強く印象に残っている。曰く、「どう決断したかではなく、どういう心境で決断したかが大事である」。
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。アーカイブはこちら