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半年以上経過の患者にも期待 iPS脊髄損傷治療

平成31年3月に国から実施を承認された人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って脊髄損傷を治療する慶応大などの臨床研究が、ようやく第1例の移植手術の実施にたどり着いた。研究は令和2年12月にスタートしていながら新型コロナの影響などで遅れていた。脊髄損傷の患者にとって大きな一歩で、国内10万人以上の患者の多くを占めるといわれる慢性期の治療にも期待が高まる。

脊髄の神経細胞が損傷すると、手足のまひなどが生じ、重症の場合は車いす生活を余儀なくされる。神経細胞は損傷部だけでなく、その周辺でも炎症が起きて死滅し、症状が悪化していく。時間が経過するにつれて治療が困難になるため、現時点で、負傷から半年以上経過した慢性期の患者に対して確立した治療法がない。

今回の移植手術の対象となったのは、負傷から4週間以内で比較的時間が経過していない亜急性期と呼ばれる段階の患者だ。研究チームの最終目標は、全ての脊髄損傷患者に対するiPS細胞を使った治療の提供だが、まずは治療できる可能性が高い亜急性患者から第一歩を踏み出した。

iPS細胞を使うメリットは、増殖が容易で、神経のもとになる細胞を大量に作れる点が挙げられる。また、今回の治療法は損傷部に直接移植するため、点滴などによる投与よりも細胞数が少なくて済む。

慶大チームは既に、今回と同じ方法で、人の慢性期に当たる脊髄損傷マウスの治療に成功している。亜急性患者を対象とした臨床研究が順調に進めば、直ちに慢性患者が対象の臨床研究に移る計画だ。移植手術の責任者である中村雅也・慶大教授は「今回は大きな一歩だが、(慢性期の治療への)新たなスタートでもある」と意気込む。

ただ、iPS細胞から作製した細胞は、がん化や腫瘍化のリスクが完全には払拭されていない。脊髄損傷患者に新たな治療法を届けるには、まず安全性を慎重に確認し、十分にデータやノウハウを蓄積した上で、次の一歩へ着実に進むことが大切だ。(伊藤壽一郎)

iPS脊髄損傷治療 慶大が初移植成功


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