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米国で大人気の豆腐 需要支える日本メーカーの技術力

環境意識の高まりや菜食主義者の増加により注目を集める「プラントベースドフード」(PBF、植物性食品)が、新型コロナウイルス禍の健康志向を追い風に世界で需要を伸ばしている。中でも増えているのは、過去には「味がない」と欧米人に不評を買っていた豆腐だ。米国ではスーパーで豆腐を買いだめする人が急増し、2020年の小売市場は前年比4割ほど拡大したとの調査もある。長期保存できる商品の充実や、メーカーの提案で食べ方が広がったことも後押ししている。

「TOFU」再注目

米国の植物性食品業界団体「The Plant Based Foods Association」などの調査によると、20年におけるPBFの小売売上高は前年比27%増の70億ドル。米国の全世帯の57%に当たる7100万世帯以上が購入し、53%だった前年から上昇した。

PBF小売市場では豆乳などの植物性ミルクが35%と最多を占める一方、注目されているのが豆腐だ。米国ではすでに「TOFU」として親しまれているが、20年は前年比41%増の1億7500万ドル。約8%増だった19年の成長率の5倍に上り「大ブームといえる人気」(業界関係者)になっている。

豆腐の製造・販売事業を米国で約40年にわたり続ける森永乳業は「19年終盤からPBFの需要が増え、健康食品と認知されて注目度が高まっていることに加え、代替肉食品として使われることも多くなり、市場は拡大傾向にある」としたうえで、「コロナの影響で買いだめの特需もあり、好調に推移している」(広報担当者)と説明する。

同社豆腐事業の売上高は非公表だが「20年度の出荷量は前年度を大きく上回り、21年度もその傾向が続いている」という。

新工場建設も

豆腐メーカーへの出資を機に1983年、米国の豆腐市場に参入したハウス食品グループも業績は右肩上がりが続いている。豆腐製造・販売が柱となる米国事業の売上高(業務用含む)は、2020年が前年比3・3%増の134億円だった。注目すべきは「これまで主流だったアジア人系が、白人が中心の米国人系の客層にも広がってきたこと」(広報担当者)で、20年は同社の販売構成比で初めて米国人系がアジア人系を上回った。

米国での需要拡大をにらみ、同社は20年1月から米ロサンゼルスの工場に約130億円を投じて製造ラインの増強を進めている。ケンタッキー州北西部のルイビルにも21年12月に30エーカー(約12ヘクタール)の土地を取得し、第3拠点となる新工場を25年に稼働させる計画だ。

ハウス食品グループ本社の浦上博史社長は21年11月の決算会見で米国での豆腐事業について言及し、「PBFが一般化し、その流れに乗って今後も伸びることが予想される。大きな成長の柱の事業として注力したい」と力を込めた。

賞味期限1年に進化

米国では1999年、食品医薬品局(FDA)が、1日25グラムの大豆たんぱく摂取が心臓病の発症リスクを軽減するというヘルスクレーム(健康表示)を承認し、豆腐などを始めとした大豆製品開発の後押しを始めた。アメリカ大豆輸出協会(USSEC)の立石雅子・日本副代表は「米国が当時、世界最大の大豆生産国(現在はブラジルに次ぐ2位)だった」として豆腐普及の条件がそろっていたことも指摘する。

それでも1980年代後半には「味がない」と、米国人が最も嫌いな食べ物として全米紙に取り上げられたこともある豆腐が、なぜここまで支持を集めるようになったのか。

現地の「TOFU」が日本人にカルチャーショックを与えるのは硬さや味のバリエーションだ。森永乳業が米国で手がける「MORI―NU」シリーズは硬さや成分、フレーバーにより8種類を展開。ハウス食品は硬さや麺タイプなど形状も変えた約50種類をそろえる。

さらに森永乳業は2021年9月、新ブランド「MORI―NU PLUS」を投入。口当たりを滑らかにし、ビタミンやプロテインなどの栄養素を強化した「豆腐仕様の革新的な大豆ベース栄養食品」として、米国では主流となりつつあるフレキシタリアン(準菜食主義者)を狙う。米国では、基本的に菜食だがたまに肉なども食べる層が増えており、同社は厳格なベジタリアン(菜食主義者)や、動物由来の原材料を一切口にしないビーガン(完全菜食主義者)より裾野が広がるとみている。

USSECの立石氏は「日本食レストランが急増し、欧米人が好む品ぞろえが増えた」としたうえで、硬めの木綿豆腐をサイコロ状に切り野菜や肉と炒めたり、サラダにのせたり、スムージーやピューレ状にして焼き菓子に混ぜたりと「硬さやフレーバーが増えたことで、便利なPBFとして米国人が自らの好みに合わせおいしく食べられるようになったことが大きい」と話す。

国土の広い米国では、保存期間の長さも重要なカギとなった。日本のスーパーなどで販売されている水を張った容器入り豆腐の消費期限は冷蔵で2~3日間。豆乳などの材料を容器に注入して作る充填(じゅうてん)豆腐は7~10日間が一般的だが、メーカーによってはさらに長期保存できる商品もある。

一方、米国で売られている豆腐は充填タイプで防腐剤を使うことなく2カ月ほど持つものが主流。ハウス食品「Premium TOFU」シリーズは65日間、森永乳業「MORI―NU」シリーズは大半が常温で1年間の賞味期限としている。「腐りやすく、型くずれしやすい豆腐は広域流通の難しさが最も克服すべき課題だったが、米国では長期保存できる商品が広がったことも需要が増えた理由」(日本豆腐PRセンター)とみている。(田村慶子)


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