• 日経平均27686.40-199.47
  • ドル円136.59136.60

「どんなものもアートに」 菅木志雄、故郷・岩手で大規模個展

現代美術家の菅木志雄(すがきしお)(77)は1960年代末~70年代の日本に起きた美術動向「もの派」の作家として知られ、近年海外でも展覧会や作品収集が相次ぐなど、国際的に高い評価を受けてきた。半世紀以上におよぶ制作活動を振り返る大規模な個展「<もの>の存在と<場>の永遠」が、故郷の盛岡市にある岩手県立美術館で開催中だ。(黒沢綾子)

美術館の空間で、互いに響き合うインスタレーションやレリーフ作品
美術館の空間で、互いに響き合うインスタレーションやレリーフ作品

対等の関係

菅の作品は、石や木、金属など身近な素材を空間に置いたり組み合わせたりすることによって、素材同士や置かれた場所、さらには人間との関係性を考えさせるというもの。菅が加えるのは並べる、つなぐ、曲げるといったシンプルな行為のみ。人間の思考や感覚が先行するのではなく、極力作為を排除し「あらゆるものと対等な関係を保持するということが、僕のものをつくる姿勢」と菅は言う。

人間以外の動物も、有機物も無機物も、そのリアルなありようをあるがままに一つ一つ認識してゆく。それらを配置することで、ものと場の本質を掘り下げていく。世界各地の有名美術館が熱いまなざしを向ける背景には、人間中心の西洋的世界観とは違う、菅の姿勢があるのだろう。

創作の原点

会場へ。インスタレーションを中心に壁に掛けたレリーフやドローイング、写真、記録映像など計121点。菅作品を60年代末から最新作まで年代順に通覧する展示は初めてで、本人も「ずいぶん長い間やってたんだなぁ」と笑う。

盛岡市生まれ。少年期を主に花巻市で過ごし、多摩美大在学中から作品を発表してきた。「誰が『もの派』と呼んだのかはいまだにわからない。おそらく東京・神田界隈の画廊から自然発生した言葉であろう」。70年代からパリ青年ビエンナーレやヴェネチアビエンナーレなど国際展に参加。「アースワーク」(米)や「アルテ・ポーヴェラ」(伊)など同時代の世界のアート動向に触れ、自分たちと共通するものを発見すると同時に「彼らとは異質なものを探ろうした」と当時を振り返る。

一方、大学の先輩が営む盛岡の現代美術画廊「ギャラリー彩園子(さいえんす)」で40年以上定期的に個展を開き、実験・検証の場としてきたことも「僕の原点」と話す。今回の展覧会では80年に彩園子で発表した作品「事位」を再制作。自ら持ち込んだトタン板や木、石などを荒々しく組み合わせ、迫力ある空間をつくり出している。

日常の素材を見直す

同じ作品も場が変わり、時間が経過すれば、ありようは変わる。しかし、菅の初期の活動からコンクリートブロックを矩形(くけい)に配した最新作までを時系列でたどっても、作風の変遷や時代ごとの特徴はつかみづらい。むしろ「変わっていない」ことに驚かされる。

「根底が全くブレてない」と同館の濱淵(はまぶち)真弓・上席専門学芸員も指摘する。菅の言葉を借りれば、もの派とは表現スタイルではなく、「生きるために世界とどう向き合っていくべきかを指し示すもの」で、「一過性のものではない」。

二股の枝と木枠を合わせた、どこか詩的な作品がある。枝先が壁を貫き、どこまでも伸びているようにも見える。材料は、静岡県伊東市のアトリエ近くで拾った木だったり、ホームセンターで入手した工業素材だったりする。日常にある素材を本来の用途や有用性を排し、ものとして見つめることから始まる。

「僕は、どんなものでもアートになり得る、表現の媒体になり得ると考える。埃(ほこり)であろうと巨石であろうと。その場が砂漠であろうと海であろうと。どんな状況でも必ず『もの』のリアリティーが存在している。それをどう見つけて、どう捉えていくかが僕のアートの問題なのです」

2月20日まで、月曜休。


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)