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【一聞百見】創造性育む「クラゲ館」に 大阪・関西万博プロデューサー、中島さち子さん

ジャズピアニストにして数学者、さらには教育家、会社経営者と多彩な顔を持つ。バラエティーに富む肩書に新たに加わったのは「大阪・関西万博 テーマ事業プロデューサー」。万博の目玉となる8つのシグネチャーパビリオンの1つを担う大役だ。中島さち子さん(42)は新時代の万博とその先にある未来を見据え、誰もが学び、遊び、創造できる社会の仕組みを作ろうとしている。

カンボジアの受講生が作ったデジタルアートを披露する中島さち子さん。「中高生程度の数学の知識がプログラミングに役立つ」と話す=令和3年12月、東京都港区(鴨志田拓海撮影)
カンボジアの受講生が作ったデジタルアートを披露する中島さち子さん。「中高生程度の数学の知識がプログラミングに役立つ」と話す=令和3年12月、東京都港区(鴨志田拓海撮影)

命が輝くために

1970年大阪万博。会場の万博記念公園(大阪府吹田市)中央にそびえ立っていたのは、70メートルの高さを誇る太陽の塔だった。一方、2025年大阪・関西万博で中核となるのは、人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)に輪になって並ぶ8つのテーマ館。各界のリーダー8人がそれぞれの知見を生かし、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の実現を目指す。中島さんは「いのちの遊び場 クラゲ館」をパビリオン名としたが、クラゲをモチーフにしたのには確固たる理由がある。

「命が輝くために大事なことは何か。建築家や数学者らチームで話し合いを重ね、『ゆらぎのある遊び』が重要だと考えました。例えば、目的もなく遊んでいるうちに、作りたいものや違った遊びを発見する砂場や原っぱ遊びのような。誰もが持つ創造性を引き出したい」

中島さんが担当する「いのちを高める」テーマ事業「いのちの遊び場 クラゲ館」のイメージ図©steAm、小堀哲夫建築設計事務所
中島さんが担当する「いのちを高める」テーマ事業「いのちの遊び場 クラゲ館」のイメージ図©steAm、小堀哲夫建築設計事務所

クラゲをイメージした建物は半透明で、中にいる人々が遊ぶ様子が外から見える設計。来場者の一人一人がかけがえのない存在であり、建物そのものにも命がある-そんなメッセージを込めている。展示を具体化するのはこれからだが、音楽や数学、技術と遊びを融合させ、創造性を育めるような空間を思い描く。

「創造性の民主化」を

半世紀を超える時を経て、再び大阪で万博を開く意味はどこにあるのか、時代の変遷にも思いをめぐらせてきた。高度経済成長期で日本社会が混沌(こんとん)としながらも盛り上がっていた1970年は「技術が未来への希望を見せてくれた時代だった」と語る。

これまでの万博は、国や大企業が最先端技術を披露し、それを目の当たりにした市民が興奮する「技術礼賛」の側面が強かったと捉える。翻って現代は多種多様な技術が社会にあふれ、誰でもSNSで情報発信できるようになった。与える側と与えられる側を隔てる境界線はもはや、なくなってきた。「本来、万博は市民のための博覧会ですから、市民が作り手になれる。万博を機に実現したいことは『創造性の民主化』です」

クラゲ館の構想を練るため、70年大阪万博のシンボルだった太陽の塔の内部に初めて足を踏み入れた際、驚いたことがある。頂に向かって伸びる塔内のオブジェ「生命の樹」を取り巻く生物の一つが、浮遊する大きなクラゲだったからだ。「(太陽の塔を制作した)岡本太郎さんは技術や進歩に対するアンチテーゼとして、原始的な命のエネルギーに着目したのでしょう」と推察する。

新型コロナウイルス禍で、人々の行動は大幅に制限されてしまった。3年後、感染状況が収束していれば世界各国から大勢の来場者が集う期待感もあるが、どれだけの人を受け入れられるかは見通せない。

「来場者の想定は30分で400~500人。体験に没頭してもらえる時間的、空間的な余地があるかどうか。いっそ、子供たちにパフォーマンスの場として明け渡し、作品をみんなで育てていくか…」。悩みながら模索を続けている。

STEAM教育に力

科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)。中島さんは、これら5分野を横断的に学ぶ「STEAM」(スティーム)教育の会社を経営している。理系分野に苦手意識を持つ人にも「遊び」ながら取り組んでもらおうと、スライムに電気を通して楽器を作ったり、数学と音楽をかけ合わせたセミナーを企画したりと、年齢を問わずさまざまな人を対象に講座を開いている。


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