1日に約2万7000個も売り上げ、日本で最も売れている駅弁と言われる崎陽軒の「シウマイ弁当」は全国に知られた横浜発祥の名物。ところが、横浜から遠く離れた兵庫県の姫路駅で、「関西シウマイ弁当」なる怪しげな駅弁が人気を集めているという。容器やパッケージの印象は崎陽軒の商品と酷似しているものの、製造しているのは地元企業。いわゆる「パクリ商品」なのだろうか。そんな疑いが頭をもたげるが、さにあらず。日本で初めて幕の内駅弁を販売した老舗企業が本家の許可を得て、約1年半かけて関西風にアレンジを加えた自信作なのだという。崎陽軒“公認”の関西シウマイ弁当とはどんなものなのか。
日本初の幕の内駅弁を販売
「崎陽軒のシウマイ弁当が売れているので関西バージョンがあれば売れるかな、と。売れるという確信はありましたが、想像以上でした」。JR姫路駅で関西シウマイ弁当を販売する「まねき食品」社長の竹田典高さんが目を細める。売れ行きは開店前から整理券を配布しなければならないほどの好調さだという。
まねき食品は知名度こそ崎陽軒に劣るものの、知る人ぞ知る存在だ。1889(明治22)年、山陽鉄道(現・JR山陽本線)の姫路駅近くで幕の内駅弁を日本で初めて販売したとされる老舗としての名は高い。日本初の幕の内駅弁は13種類のおかずが入った二重の折詰。米が1升6銭だった時代に12銭だったという。現在の価値にすれば2000円前後だろうか。なかなかの高級弁当である。
その老舗も新型コロナウイルス禍の影響をもろに受け、駅弁の販売が落ち込んだ。感染拡大が続いていた2020年3月、竹田さんは一計を案じる。崎陽軒に自ら働きかけコラボレーションを打診したのだ。崎陽軒の名前が浮かんだのは、「ご当地を大事にされている理念が素晴らしいから」。野並直文社長とも直接交渉したという。
崎陽軒がこれまで他の駅弁業者とコラボしたことはなかった。無謀は承知の上だった。だが、崎陽軒はコラボを快諾。同社広報・マーケティング部の小川萌子さんは「コロナ禍で駅弁業界全体が大きな打撃を受ける中、明るい話題を創出し、業界を活性化していきたいという思いがまねき食品と当社で一致しました」と話す。関西の人に崎陽軒のシウマイやシウマイ弁当を知ってもらえる好機になるとも考えたという。
本家である崎陽軒のシウマイ弁当は1954年に誕生した。シウマイ5個とタケノコ煮、マグロの漬け焼、かまぼこ、鶏の唐揚げ、玉子焼きなどのおかずがご飯とともに経木(きょうぎ)の容器に詰められている。シウマイはかつて4個だった時代もあるが、「もっと食べたい」という声を受け、1974年に1個増えた。
材料に豚肉だけでなく干し貝柱を使うことで独特の風味を醸し出しているシウマイはいうに及ばず、脇役ではあるが、タケノコ煮にも根強いファンが多い。税込み860円という価格はコストパフォーマンスも上々だ。そんな完成形ともいえる名物駅弁を、関西シウマイ弁当はどうアレンジしたのか。
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