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書評

『サブカルチャーを消費する 20世紀日本における漫画・アニメの歴史社会学』活動写真から秋葉原まで

『サブカルチャーを消費する』(玉川大学出版部)
『サブカルチャーを消費する』(玉川大学出版部)

大著である。必要なことが必要なデータとともに詳細かつ的確にまとめてあり、少しでもコンテンツやサブカルチャーを研究しようと思う人には必携の書といってよい。

戦前、まだ学制も整わず働く年少者が大人に交じって活動写真を見ていた時代から、戦後、漫画とアニメが隆盛を極め、秋葉原がオタクの街に変貌するまでを、本書は「消費」という観点から描き出す。

それは、社会と「家族」が、法的規制によって、あるいは年少者の可処分所得(=小遣い)の多寡によって、年少者の消費と、またコンテンツのあり方をコントロールしようとしてきた歴史でもあった。

年少者たちは「小遣い」によって「消費社会」へ、そして「家族」の中へと呼びこまれていったのである。

本書には、目を開かされる記述や、なるほど、と思う記述が、あちこちにある。

たとえば戦後、少年たちの間で最初にはやったのは戦記漫画なのだが、その中には、戦争そのものは否定せず、「僕たちならもっとうまくやれた」という無邪気な年長者批判・年長者への反抗がひそんでいた、と著者は指摘する。これが、戦後の漫画やアニメの〈現状の外に出る〉という対抗文化的特質の始まりだったといえるが(ロボットアニメもその継承者だ)、年少者をターゲットとするそうした作品が作られ得るということは、とりもなおさず、年少者が自由に使える小遣いを手にした、ということの結果でもあるのだ。

一方、戦後漫画が男女別に発展していく中で、少女たちをとらえたのはバレエ漫画であった。しかしバレエ漫画の場合は、親世代への反抗というよりむしろ「戦後家族」の理想と結びつけられており、この「戦後家族」の理想はその後も長く女性たちを縛っていく、と著者は言う。

実のところ女性漫画とコミケに関する記述には少し首をかしげる部分もあるが(とくに女性漫画の歴史と心性を、バレエ漫画だけでまとめるのはいささか強引だろう)、この大著の中でそれは瑕疵(かし)ともいえる。

コンテンツという消費財を、それを取り巻く社会システムという視座で考えるとき、本書から得られるものは大きい。貞包英之著(玉川大学出版部・3740円)

評・藤本由香里(明治大教授)


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