経営陣には「描く力(構想力)」と「決める力(決断力)」が重要
これに対して、経営陣(「経営人材」)は5つの力の中でも特に「描く力(構想力)」と「決める力(決断力)」の2つの発揮が期待されます。
“社長の目”を持つことで磨かれる「描く力」
「描く力」とは構想力のことです。自社の事業ビジョンや個々のサービスの到達点、目指すべき姿を描けるかどうかが問われます。
デキる経営者の人たちがよく口にするのが、「頭の中でくっきりと絵を描いて、それを社員や社外のステークホルダーに説明する」というフレーズです。これは「見えていないものは、成し遂げ得ない」という信念から出てくるものでしょう。
「描く力」でよく言われるのは<鳥の目>を持つことですね。自分の立ち位置や仕事内容を俯瞰(ふかん)してみる癖を身につけているかが問われます。もちろん、どのような立場であれ、究極は「社長の目」に立つことが重要です。将来の後継者候補となる人材は、日々、社長の目から自社の事業や日々の業務を見ているものです。
私たちは、経営陣の方々が「描く力」を持っているかどうか評価するポイントとして、「広く市場の動き、事業環境に目配せできているか」「自分なりのビジョンを創出しているか」「ビジョンや構想を戦略や組織に落とし込んでいるか」を見ています。
正しさと明確さが求められる「決める力」
「決める力」とは、決断力です。リーダーというのは毎時間、毎分、毎秒が決断の連続。その決め方にもその人の個性が出ます。一人で決める人、衆知を集め合議する人、さまざまです。
決められないトップやリーダーがいると、向かうべき方向性が定まらないため、組織は混乱し、停滞する要因にもなります。昭和型の大企業トップに多いのが、決断する段階での「意思決定のタライ回し」です。「あの役員はどう言っているんだ?」「皆が良いというなら」「先に副社長に聞いてみてくれ」などの言葉は、その典型ですね。
確かに、決めないということも一つの意志決定です。しかし、それがどんな災いをもたらすかは、これまで世間を騒がせてきた偽装・粉飾問題や大型倒産などを見ても明らかですね。どれも、意思決定の先送りがもたらした悲劇です。また、そもそもの偽装問題や先の粉飾決算の発生自体は「間違った決定」による悲劇です。ただ決めればよいというわけではないのは、当たり前のことです。ここで言う「決める力」を持つ人とは、自分の中に正しい判断基準を明確に持っている人のことです。
私たちは、「決める力」の有無を評価するポイントとして、「事業や経営での意思決定への主体的な参画があるか」「多様な意見・利害関係の中でも最適な判断をすべく動いているか」を見ています。
経営陣(「経営人材」)として優れた成果をあげている方々に共通しているのは、先の「やり切る」「まとめる力」の2つの力に加えて、「描く力」「決める力」の質と量とスピードが抜群に優れていることです。皆さんがパッと名前を思いつく名経営者は皆、これに当てはまると思いませんか。