近年のキャンプブームの影響もあって、今年の東京オートサロンではユニークなキャンピングカーが並んだ。しかし日産がこのコンセプトカーで示したのは、移動手段である車の中に泊まるという普段は味わえない楽しみだけではなく、レジャーとしての旅が変わっていく可能性だ。ビジネスパートナーシップ開発本部の堀内伸一さんは「キャンピングカーは非日常に連れて行ってくれるものですが、この車は、日常の延長線上に旅があるという考えに基づいています」と説明する。
堀内さんによると、企画の発端には昨今のコロナ禍がある。感染拡大を防ぐために海外旅行を自粛する動きが広がり、国内旅行でも県をまたぐ長距離移動が制限された一方、近場に出掛ける「マイクロツーリズム」も新たな潮流として注目を集めた。このコンセプトカーを産んだのは、キャンプという特別な目的に合わせた自動車があるように、リラックスした気持ちで出発する何気ない旅行にも専用の自動車があっていいのではないか、という発想だ。
「通常、旅行用のニーズが高い車種を展示するときは大自然や景勝地の写真を大きく引き伸ばして背景にするのですが、今回は身近な場所を旅するイメージなので、あえて町並みを写した写真を使っています」(堀内さん)。新しいコンセプトをアピールするためには、車づくり以外でも、さまざまな工夫や苦労があるようだ。
今回のコンセプトカーには販売の予定はないが、大野さんは「家具メーカーとコラボできたらクオリティーがさらに上がるのではないか」と意欲満々。堀内さんも来場者の反応を見て製品づくりに生かしたいと話している。
今年の東京オートサロンは、感染予防対策で入場者数の上限が収容人数の50%に制限されたものの、3日間の参加人数は12万6869人に上った。出展者数は366社、出展車両台数は712台だった。次回は2023年1月13日から15日にかけて幕張メッセで開催する予定。