このNRHO軌道も過去の宇宙機が一度も投入されたことのない軌道である。そのため2022年3月19日、米国のロケット・ラボ社のキューブサット「キャップストーン」が打ち上げられ、この軌道の事前テストフライトが行われる。
つまり、わずか25kg、電子レンジほどの大きさのこの小型キューブサットは、史上はじめてNRHOに投入される宇宙機となる。また同機体は、アルテミス計画に関連して打ち上げられる最初の宇宙機となる。
「アルテミス計画」をサポートする商業月輸送サービス「CLPS」
月面への長期的な滞在を実現するには入念な調査が不可欠。また、月面に前哨基地や、さらに恒久的な月面基地を建設するには、大量の資材・物資を月に送り込む必要がある。
NASAが進めている商業月輸送サービス「CLPS」(Commercial Lunar Payload Services)は、それら機材や物資の輸送を民間企業に託す計画だ。ロケット、宇宙船、探査機、着陸機、探査ローバーなど、月輸送に必要なあらゆる宇宙機の設計開発から運用までを民間企業に託すことで、NASAは月開発を多角的で円滑に、かつ低コストで進めようとしている。
その第一段「CLPS 1」の打ち上げが2022年前半に予定されている。ULA社の新型ロケット「ヴァルカン・セントール」によって、米国のアストロ・ボティック社の無人月面着陸機「ペレグリン」が打ち上げられる。ペレグリンは月面ローバーや探査機器など、28機ものペイロード(積載物)を搭載し、月の「死の湖」に着陸する予定。ペイロードの中には日本の宇宙開発ベンチャー、ダイモン社の超小型ローバー「YAOKI」も搭載される。
2022年初頭時点において、CLPSは第7回の打ち上げ(2024年)までプログラムされていて、各ミッションで使用される民間月着陸機はすべて決定済。現在は運用テストが重ねられていて、搭載するローバーやランダー(着陸機)、観測機器などの内容も固まりつつある。
日本の月面着陸機も続々
▼JAXA「OMOTENASHI」
NASAのアルテミス計画EM-1で使用されるSLSロケットには、JAXAの超小型探査機「OMOTENASHI」が相乗りで搭載される。このロケットの主たるペイロードはオリオン宇宙船だが、その打ち上げ能力に余力がある場合、こうした相乗りサービスが行われるケースがある。
OMOTENASHIは極小のキューブサットであり、そのサイズは12×24×37cm、質量は12.6kg。その構造はシンプルであり、緩衝材を使って月面にハードランディングする。この着陸に成功すれば、日本初の月面着陸機になる。