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「100年に1度」の変革期でも失われない…“スバルらしさ”の哲学と覚悟

国内唯一の水平対向エンジンを採用したスポーツカー「BRZ」や「WRX」を生み出し、世界でも「スバリスト」「スービー」と呼ばれる愛好家を持つSUBARU(スバル)。その独自のアイデンティティが揺らぎかねない岐路に立たされている。自動車業界が今、電動化をはじめとした「100年に一度」と言われる変革期を迎えているためだ。「純粋な内燃機関を持つ最後の自動車になるかもしれない」。スバルの技術陣はこんな危機感を抱きつつ、新型「BRZ」や「WRX」を開発したという。一方でEV(電気自動車)開発にも抜かりはなく、2年ぶりに今月開催された東京オートサロンでは近未来モータースポーツEVが発表された。EVになっても「スバルらしさ」は健在なのか。

スバルの「STI E-RA CONCEPT」=14日、千葉市美浜区(西隅秀人撮影)
スバルの「STI E-RA CONCEPT」=14日、千葉市美浜区(西隅秀人撮影)

燃料機関なくても「スバルらしさ」は健在

雲一つない冬晴れの幕張(千葉市美浜区)に、多種多様な車たちが再び勢ぞろいした。スバルは近未来モータースポーツEV(電気自動車)「STI E-RA CONCEPT」を発表。同社初のEV「ソルテラ」に続くスポーツEVの開発は、変革期に立ち向かうスバルの覚悟とも言える。

国内で唯一、水平対向エンジンを採用し、車づくりにおいて長年独自路線を貫いてきたスバルにとって、電動化の時代は自身のアイデンティティーの危機でもあった。完全なEV車となれば内燃機関は必要なくなり、「スバルらしさ」の一つが失われることになるからだ。

「STI E-RA CONCEPT」はヤマハ発動機製のモーターを採用し、最大800kW(1088㎰)という高出力を独自のモーター制御技術で駆動させる。「誰もが安全で快適に、どこまでも走りたくなるクルマを創り続けるため、モータースポーツに挑み技術を磨き続け、本プロジェクトで得た知見も将来の電動化社会に向けた取り組みとして活用していく」(スバル)といい、同社の強みである「全輪制御技術」の知見を活用しているのが特徴だ。

「電動化の時代でもスバルらしさは失われない」

こう強調するのは、新型「WRX」の開発責任者である五島賢さんだ。「トヨタと共同開発したスバル初のEV車であるソルテラは、スバルが持つAWD(四輪駆動)技術を存分に生かし、舗装されていない山道を走行しただけでなく、砂利道をドリフト走行した。その走りを見て、当初スバルのEV化を不安視していた人々にも『スバルらしさ』は失われていないと安心してもらえた」と胸をなでおろす。

そもそも「スバルらしさ」とは何なのか。

スバル社員にこう尋ねると、決まって「安心と愉しさだ」と口をそろえる。実際、スバル車を購入する層は、スバルが独自に開発した運転支援システム「アイサイト」に惹(ひ)かれた人や、「WRX」や「BRZ」といった高い走行性能を持ち、走りに特化したスポーツ車を求める人が少なくない。「スバリスト」というスバル愛好家を指す言葉があるほどだ。他のメーカーには無い特徴だろう。

「スバルらしくない」は誉め言葉?

スバル技術管理部部長の本井雅人さんは「スバルは安全に関して徹底的に妥協しない。特にブレーキの制動距離に関しては、1ミリでも短く止まることを追求する」と語り、こう続けた。

「それがスバルらしさだ」

確かに、スバルは4輪駆動の性能もあってか、特に雪国での信頼性が高く評価されている。日本だけでなく北米やカナダの降雪地帯では強いニーズがある。だからこそ、「たとえ電動化になっても『自動車設計の安全思想』は変わらない。スバルとしてはたとえEVになっても、そういった部分を評価してもらえるメーカーであり続けたい」(本井さん)というのだ。

EV化が叫ばれる時代だが、スバルは独自路線の追求を継続する。その強い意思がひしひしと伝わってくる。スポーツクーペの代表格である新型「BRZ」の開発だけでなく、フラグシップスポーツセダンである新型「WRX」を昨年発売したことも、その証左であろう。

一方、その新型「WRX」が採用したスポーツカーらしくない「樹脂パーツ」をめぐり、大きな議論も呼んだ。ネット上では「これはスバルのWRXではない」という厳しい意見も散見された。だが、開発責任者の五島さんによれば、そういった批判はむしろ「褒め言葉」だというのだ。

五島さんは「これまでのWRXたちも、初登場時は多くの批判を受けてきた。丸目型ヘッドライトのフォルムはバグ(虫)のようだと言われ、そこから涙目型、鷹(たか)目型への変遷を経る過程でも、多くの批判があった」と振り返る。

しかし今では、それらのWRXが大きく評価されている。「批判はある意味、挑戦の歴史でもある」という。五島さんの目は自信に満ちあふれていた。


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