服を着た状態の写真2枚からAI(人工知能)で体型を推定し、その人の3Dアバターを作成できると話題のアプリ「Bodygram」(ボディグラム)。そのユニークな技術が様々な業界のサービスに活用されている。EC(電子商取引)市場の急拡大や新型コロナウイルスの影響で高まった非接触ニーズも背景にして、アパレル通販で採用されているほか、接触せずに採寸するサービスとして大手百貨店が採用。また、個々人の体型データを必要とする寝具メーカーがオンラインショップでの採寸機能として導入した。さらに最近では介護現場で問題となっている「大人用紙おむつ」のサイズ選びの解決策としても期待されるなど、オンラインサービスの拡充とともに活躍の場を広げている。
始まりはアパレルECの採寸機能
「見覚えのある体型」「リアル過ぎて直視できない」─。ボディグラムで3Dアバター化された自分の体を目にした人たちの反応だ。服を着たままスマートフォンで全身写真2枚を撮影し、身長・体重・性別・年齢を入力するだけで、AIがわずか15秒ほどでその人の体型を3D画像化する。そのユニークさとリアルな再現性が若者の間で話題となり、動画投稿アプリなどでも高い注目を集めた。可視化されたボディラインをダイエットの“励み”に使うというユーザーも現れた。
「こんな使い方もあったのかと、様々な用途でニーズがあることに気付かされています」と話すのはボディグラムの最高経営責任者(CEO)であるレイ・アイバさん。というのも、ボディグラムのルーツは米・シリコンバレーを拠点とするカスタムシャツの通販ブランドが開発した、ボディサイズの採寸ツールだったからだ。
この通販ブランドが誕生したのは2015年。「服を買いに行くのが面倒」というエンジニアのアイデアから生まれたビジネスだったが、正確なサイズ選びが重視されるシャツだけに購入時に試着できないことがネックとなっていた。それを解消するために開発されたのがAIを活用した採寸技術だった。
その後、世界的に急拡大するアパレルECの市場でのニーズを見込み、「ボディグラム」として事業化。2019年に日米でボディグラム社を設立し、2020年にアプリとしてリリースしたところ、その革新的な技術に国内外の投資家から1,700万ドル(約18億円)の資金が集まった。
「自分の体」を知るプラットフォームに
ボディグラムの特徴は、およそ12万体に及ぶ人体データをもとに構築された独自のアルゴリズムにある。ディープラーニングによって多様な条件のデータをもとに学習したAIが、着衣の全身画像から全身24カ所の身体サイズを計測し、「誤差1.5センチ以内」という高精度のボディラインと、体脂肪率や筋肉量などの体組成データを導き出す。
「自分の体の情報を得るには3Dスキャナーや体組成計等の機器が必要となり、そのためのコストや測定時間の負担が大きかった」というアイバさん。ボディグラムではその敷居を下げるどころか、たった2枚の画像で全身を把握でき、しかも無料で測定できるようにした。「そもそも誰もが自分の体の情報を知る権利をもっており、知ることはとても価値があること」と考えたアイバさんは、自分の体の情報を入手しづらい現状も「解決すべき課題」の一つと捉え、誰もが使いやすいプラットフォームとする仕組みづくりを優先した。