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国産コロナワクチンと万博で「薬の町」復権兆し

存在感低下が叫ばれて久しい「薬の町」大阪・道修(どしょう)町に復権の兆しが見えてきた。かつては製薬会社の本社が軒を連ねたが、海外市場への注力から東京シフトが加速し、合併などでかつての名門ブランドも社名から消えつつある。往時をしのぶ声が多いなか、ここにきて道修町発の新型コロナウイルスのワクチンや治療薬開発に期待が高まっており、健康・医療がテーマの2025年大阪・関西万博も追い風になりそうだ。

止まらぬ東京シフト

大阪市中央区に位置する道修町は、江戸時代にオランダや中国からの輸入薬を扱う薬商が集まることで薬の町になったとされる。明治期に入り、現在も続く製薬会社の起源となる企業が相次いで誕生。いまなお多くの製薬会社がオフィスを構える。

ただ、薬価改定による価格の引き下げなどで国内市場は縮小。多くのメーカーが海外市場に活路を見いだすのと並行して、本社機能も東京へ比重を移していった。

田辺三菱製薬は三菱ケミカルホールディングスの完全子会社になり、令和2年に上場廃止。武田薬品工業は東京にグローバル本社を構え、平成31年に道修町の本社ビルを売却した。さかのぼれば、藤沢薬品工業が17年に合併を経て東京本社のアステラス製薬となっている。

消える「大日本」の商号

そんななか、大日本住友製薬が4月、社名から「大日本」を外し、「住友ファーマ」に変更する。事業内容の拡大や海外売上高の増加などを背景に、住友ブランドを活用していく考えからだ。

明治期に道修町で創業した大日本製薬が、住友製薬と合併したのは平成17年。現在も東京と大阪の両本社制を敷いてはいるものの、すでにグローバル戦略を担う機能などは東京へ移している。

それでも大日本の社章に由来する「マルピー」の愛称で呼ぶ年配の関係者は多く、商号変更を決断した野村博社長は「寂しく感じる」と明かす。

ワクチンと治療薬に期待

「昔はすごかった」と当時のにぎわいを懐かしむ財界人が多いなか、再び注目を集める動きが出てきた。国産コロナワクチンの開発だ。

いまも道修町に本社を構える塩野義製薬がコロナのワクチンや治療薬開発に注力。海外産ワクチンが主流になるなか、国内で最終段階の臨床試験(治験)を始めており、国産ワクチンとして最速の実用化を目指している。田辺三菱製薬もカナダの子会社が植物由来のコロナワクチン開発を手がける。

また、「復権のきっかけになる」と日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長が話すのは「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとした大阪万博の開催だ。

再生医療や健康寿命の延伸などを含むライフサイエンスが注目され、製薬会社の知見に期待がかかる。若林氏は「薬による治療だけでなく、病気になることを防ぐ『未病』分野で人工知能(AI)やITとの連携が進む」と指摘する。大日本住友製薬もデジタル技術を駆使した事業分野を成長の柱の1つに位置付けている。

「医療分野は成長産業」。歴史の中で培った知見で創薬以外にも事業領域を拡大し、道修町の存在感が高まることに経済界は期待を寄せている。(岡本祐大)


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