深刻な北海道の後継者不足 休廃業・解散の前の対策

    中小企業の経営を引き継ぐ人材不足が全国的に課題だが、北海道の後継者はより深刻だ。信用調査会社の報告によると、令和3年の北海道の後継者不在率は71・0%で、全国平均の61・5%よりも10ポイント近く高い。道内で事業承継を支援する団体の関係者は「相手(承継先)が見つかるまでに時間がかかるため、早めの後継者探しが重要」と指摘する。

    廃業を決めた富士溶融工業の遠藤社長。長年使ってきた炉に手をかけながら「寂しい思いはある」と語った=18日、札幌市東区(坂本隆浩撮影)
    廃業を決めた富士溶融工業の遠藤社長。長年使ってきた炉に手をかけながら「寂しい思いはある」と語った=18日、札幌市東区(坂本隆浩撮影)

    「道内唯一」も廃業

    札幌市内で金属の亜鉛メッキ処理を手掛ける富士溶融工業の遠藤友也社長(67)は昨夏、廃業という形で67年の会社の歴史に幕を下ろすことを決めた。

    道内で唯一、ボルト類や座金など小物のメッキ処理ができる企業として強みを持っていたが、収益の主軸だった公共事業関連の受注が減少。設備管理や人件費などのコストは変わらず、厳しい経営環境の中で熟慮を重ねた結果という。

    当初はM&A(企業の合併買収)や経営統合が視野にあった。事業承継の申し入れもあったが、業界の先行きが明るくないことや、後継者や売買先探しに時間がかかるリスクを考えて断念。倒産の可能性も想定し「取引先への迷惑を最小限にするため廃業を選んだ」と語る。

    道内では同社のみの業態だったこともあり、取引先の一部はメッキ処理が必要な製品の取り扱いをやめた。道外企業に依頼すると、輸送費などコスト増が避けられず収益性が下がるからだ。

    「寂しい思いはある。もっと早くに引継ぎとか考えていれば違った道になっていたのかもしれない」。遠藤さんは長年使ってきた炉に手をかけながら語った。

    高齢化が拍車

    大手信用調査会社の帝国データバンク札幌支店などによると、全国の中小企業経営者の平均年齢は令和2年の調査で60・1歳。北海道は60・9歳だが、全体の6割以上は60-70歳以上で「後継者難」が高齢化に拍車をかけているという構図がある。


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