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サステナブル金融が企業と地銀に迫る「踏み絵」

環境問題などの社会課題の解決や、持続可能な社会の実現を金融面から促す「サステナブルファイナンス」が急拡大している。温室効果ガス排出削減などを目的とした投資を進める企業に、大手銀行は支援を進める。一方、地域金融機関はノウハウが乏しく、新型コロナウイルス禍で業績不振にあえぐ顧客も尻込みしている。だが、金融機関にとってコロナ禍の緊急支援から持続的成長に向けた投資へとかじを切り、サステナブルファイナンスを広げることが、地域経済活性化へのカギになりそうだ。

「資金調達できなくなる」

大阪に本社を置く化学メーカーの新日本理化は、バイオマスなどのクリーンエネルギーを研究する施設の建設費用にあてるため、りそな銀行などから約30億円を調達した。

「環境や社会課題に対する取り組み状況について説明してほしい」

近年、投資家からこういった問い合わせが増え、取引先からも温室効果ガスの排出状況を質問されるようになった。「会社の姿勢を社外にアピールしないと、数年後には資金調達ができなくなるかもしれない」。担当者はこうした危機感があったと明かす。

資金調達には使用目的を環境対策に限った「グリーンローン」を利用した。環境負荷低減への貢献について、第三者機関の認証が必要で、手数料の分、通常融資に比べてコストがかかる。同社は「もっと大きな企業が対象で、正直縁遠いものと思っていた」と認める。だが、政府が2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、外部環境は一変。企業アピールに生かせるグリーンローンを選んだ。

自動車産業を中心に、すでに構造転換は加速。脱炭素化に対応できない企業は大手のサプライチェーン(供給網)から淘汰(とうた)される事態が起きかねない。

「コロナ対策など目先の課題がある中で脱炭素や環境を優先するには、多くの企業は人材や資金が足りない。そこを金融機関がサポートする必要がある」。りそなホールディングスの吉本圭吾SDGs推進室長は話す。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの調査では、2020年の世界のサステナブルファイナンス発行額は前年を上回り7千億ドルを超える。三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループといった国内メガバンクも相次ぎ目標実行額を引き上げた。

中小や地銀の意識乏しく

一方、地銀をはじめとする地域金融機関はどうか。

企業とやり取りする関西の地銀幹部は「大手の下請けに入る中小企業の中には、持続可能な社会への取り組みを鮮明にしなければ『取引がなくなる』との焦りがある」と話す。ただ、そうした危機感を持つのは1、2割にとどまる。長引くコロナ禍の影響からの立て直しや、後継者問題など目先の課題に追われ、経営者は手いっぱいという。

地銀では自行内にノウハウや人材が不足していることも課題だ。例えば、排出量削減などの実行状況に応じて金利などが変化するサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)では、目標設定を審査する第三者機関を企業に紹介する必要があるが、経験の少ない地銀ではそういった機関とのつながりも少ない。

地銀業界でサステナブルファイナンスの優等生とされる滋賀銀行は、これまで多くのSLLを実行。ほかにも地元自治体や企業との間でグリーンローンを実施するなど実績がある。地元は琵琶湖を抱え、環境問題への意識が高い土地柄で、高橋祥二郎頭取は「課題を先送りせずに地域の持続可能性を担保しなければならない」と話すが、こうした「意識が高い地銀」(日本銀行関係者)はあくまで少数だ。

地域金融の生きる道に

日銀は金融機関の動きを促そうと、環境対応の投融資を手がける場合に金利ゼロで資金を貸し付ける「気候変動オペ」を導入。黒田東彦(はるひこ)総裁は21年7月、「地域金融機関も含めて、幅広い金融機関が関心を持って参加してくれるのではないかと期待している」と語り、脱炭素への貢献に自信を見せた。

一方、公表された詳細では、国際機関が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に沿った一定の情報開示をしている金融機関を対象にするとした。

これは地域金融にとっては厳しい条件となる。日本総合研究所の大嶋秀雄副主任研究員は「考え方に賛同していても、多くの地域金融機関はすぐには(情報開示の)リポートまでは出せないだろう」と指摘。コロナ対応での支援枠組みでは日銀当座預金残高に特別金利がついたのに比べても、メリットは小さいとされる。

ただ、地域に根差す地銀、信金などの地域金融機関にとって「サステナブルファイナンスこそ生きる道」になるという指摘もある。岡三証券の高田創グローバル・リサーチ・センター理事長は「コロナでの緊急対応から、持続性のある支援への転換が必要」と強調する。地域にこそ、環境問題や高齢化、少子化などをはじめとする社会課題は山積する。地域金融がサステナブルファイナンスを広め、地域や企業と一体となって社会課題解決にあたることが重要と訴えている。(岡本祐大)


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