名護市長選、与党勝利も本当の勝負は秋の知事選

    米軍普天間飛行場の移設先となる沖縄県名護市の市長選で与党推薦候補が勝利したことで、政府は計画推進に向けた「地元の理解」を得た形となる。同市辺野古への移設工事にあたっては名護市長も一定の権限があり、市側から工事を妨害される事態は免れた。ただ、玉城デニー知事はあらゆる手段で工事阻止を図っており、辺野古移設を進める上で本当の勝負は秋の知事選となる。

    米軍普天間飛行場の移設先、沖縄県名護市辺野古沿岸部=2021年11月
    米軍普天間飛行場の移設先、沖縄県名護市辺野古沿岸部=2021年11月

    「名護は最初の大事な選挙だ。頑張ろう」

    選挙期間中、岸田文雄首相は沖縄県選出の国会議員にこう呼びかけていた。自民党の茂木敏充幹事長は自民の県議全員に電話でハッパをかけ、首相自らも県連会長に奮起を促したという。

    政府与党が名護市長選にこだわったのは、埋め立て予定地に流れ込む河川の水路変更工事で市側の理解がなければ遅れる恐れがあったからだ。さらに大きいのは、移設工事を黙認する現職の渡具知武豊(とぐち・たけとよ)市長が再選されたことで「地元の理解」という大義名分を維持できたことだ。

    政府が辺野古埋め立て工事で土砂投入に着手したのは、渡具知氏が前回(平成30年2月)初当選した年の12月だった。防衛省関係者は「渡具知氏が勝たなければ、あのタイミングではできなかった」と語る。

    政府は渡具知氏が初当選すると、年約15億円の「米軍再編交付金」を交付した。同省幹部は「基地負担をお願いする側として、感謝の気持ちを形で表すのは当然だ」と説明する。渡具知氏は交付金の一部を保育費、子供の医療費、給食費の「無償化3点セット」の財源に充て、市内では現役世代を中心に移設反対派の影響力が弱まった。

    ただ、4年前は名護市長選で与党推薦候補が勝利したとはいえ、9月の知事選は移設反対を掲げた玉城氏が勝利し、玉城氏は法廷闘争や行政手続きの遅延で工事妨害を図ってきた。今回の名護市長選での与党系勝利は政府にとって大きな意味を持つが、知事選で玉城氏が再選されれば、市街地に囲まれた普天間飛行場の危険性除去は遠のくことになる。(杉本康士)

    >名護市長選、自公系現職が再選確実 岸田政権、参院選へ弾み


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