夏の参院選、秋の県知事選と続く沖縄の「選挙イヤー」の初戦となった23日の名護市長選は、自民、公明両党が推す現職の渡具知武豊(とぐち・たけとよ)氏が再選を果たした。岸田文雄政権の浮沈がかかる夏の参院選に向け、与党にとっては好発進となった。
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自民の茂木敏充幹事長は23日夜、党本部で記者団に「選挙イヤーの大切な最初の選挙で大きな勝利を飾った。良いスタートを切ることができた」と述べ、参院選と秋の県知事選に向け勢いづくとの認識を示した。
岸田政権が昨年10月の衆院選に続いて参院選を制すれば、最長3年後まで国政選挙を行わずに政策実現に集中できる「黄金の3年」を確保できる。与党は初戦の名護市長選を重視し、市長選では異例の挙党態勢で臨む方針だったが、新型コロナウイルス感染拡大が誤算に。蔓延(まんえん)防止等重点措置が9日に沖縄県に適用され、予定した政権幹部の応援入りや大規模集会をすべて取りやめた。
代わりに自民幹部らは所属議員に徹底した電話での支持依頼を指示。茂木氏も連日、地方議員や経済界関係者らに1日50件近い電話をかけた。「幹事長から電話が来た県議や市議が震え、『必死にやらなければ』となっている」。選挙戦終盤の党会合で地元議員はこう語った。
名護市は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である辺野古を抱え、共産党や立憲民主党など移設反対派「オール沖縄」の活動を象徴する地。衆院選では名護市を含む沖縄3区で自民が9年ぶりに勝利し、市長選の結果とあわせオール沖縄の退潮が鮮明になった。
一方、支援した新人が敗れた立民には暗雲が垂れ込めた。大西健介選対委員長は「力が及ばなかったことをおわびする」との談話を発表。幹部は「党勢には無関係だ」と話すが、泉健太代表による新体制発足後、初めて全国的に注目を集めた選挙を落とした。
共産は「オール沖縄の戦いに連帯する論戦に大いに取り組もう」(志位和夫委員長)と訴えたが、初戦を落とした。共産が目指す野党共闘の深化にも逆風となる可能性がある。(田中一世、沢田大典)