福岡市に国際金融拠点の形成を目指す取り組みが、着実に成果を出している。福岡の主要企業や機関でつくる「チーム福岡」を中心とした産官学一体の取り組みに加え、中長期的な成長可能性が高いアジアへの地理的な近さなどが強みだ。追い風の中、関係者は九州から海外への投資の重要性を強調している。
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「福岡から、九州から、日本経済に一石を投じることができる。最初は仮説だったが、今は確信を持っている」
24日、福岡市内で開かれた国際金融に関するフォーラムで、福岡市国際金融アンバサダーの岡澤恭弥氏はこう強調した。岡澤氏はフランス系大手金融機関、BNPパリバグループなどで豊富な実務経験を持つ。
シンガポール取引所の東京事務所在日代表、與(あたえ)利博氏とともに、外資系金融機関との人的ネットワークをフル活用し、誘致に尽力。令和2年9月のチーム発足から、福岡市への進出企業は10社を数える。
各社の狙いは、資産運用やファンド管理部門を分散するだけでなく、地理的な条件を生かし、九州や日本だけでなく、アジア全体の投資案件を発掘する拠点とすることだ。既に進出企業が組成する投資ファンドによる出資も着々と進む。
フォーラムでは、九州電力の池辺和弘社長が「次世代に向けて種をまき続けないといけない」と訴え、高島宗一郎市長も「ビジネスやサービスを転換するノウハウと資金が入り、大きな変化が生まれる」と手応えを語った。九州経済連合会の倉富純男会長は「福岡での流れを九州に広げていきたい。全体で次のステージに上がることになる」と述べた。
成果の一方で、課題も見えてきた。九州域外からの投資が芽生えつつあるのに比べ、九州から域外への資金の流れが細いことだ。
国際的なファンドを通じた投資などは、金銭的なリターンだけでなく、成長の源泉となる情報を得ることにもつながる。岡澤氏は「経済は情報を制することが全てだ。諸外国の金融都市は情報を集積し、それを利用する地元企業が先行者利益を得ている」と解説する。(中村雅和)