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阪神大震災27年・耐震化を学ぶ(上)仕口に着目した新工法

木造軸組の耐力(木造建築の強さ)が壁量(住宅の耐力壁が持っている、地震や強風に抵抗するための強度)に依存するという規定は昭和25年の建築基準法制定とともに始まった。日本古来の木造軸組構法は土壁や石場立て基礎とともに法規定の枠外に置かれ、筋交いや合板と接合金物を多用する在来工法か、多数のボルトやダボピンを使用する新建材(大断面集成材)工法が採用されてきた。

平成7年の阪神大震災で多くの木造住宅が倒壊したことは業界に大きな衝撃を与え、それまでの仕様規定によらない性能規定型の設計法「限界耐力計算」が建築基準法に取り入れられた。柱と梁(はり)の接合部である仕口の耐力と変形性能(粘り)に加え、減衰性能(振動エネルギーを吸収する力)も付与することができるようになり、木造軸組構法へ回帰する道が開かれた。また、研究施設に動的な実験装置や大型振動台が導入され、木造軸組が破壊するまでの大変形まで実験が可能となった。

こうして大震災後、木造軸組の仕口に小さな減衰装置(ダンパー)を組み込み、軸組の耐力と変形性能を的確に向上させる環境が整った。粘弾性体を使う「仕口ダンパー」(特許出願)を発想したのは平成10年。普及すれば一般の木造住宅でも壁のない空間が可能となる。どれだけの耐力と変形能力、減衰性能があれば、伝統的のみならず現代的な木造軸組に適合するのかに試行錯誤を繰り返したが、宮大工のような伝統的構法を熟知している人の協力が不可欠だった。

限界耐力計算を用いた設計マニュアルの輪郭ができ、公的な性能証明を得ることができたのは大震災から6年後。それから数年のあいだに設計マニュアルも進化し、実施採用件数は約3千件に増え、さらに2年後に特許が成立した。

そして、仕口ダンパーに用いられている粘弾性体の宿命である温度・速度依存という力学的性質が改善されれば、設計法がさらに簡易になり適用できる建物の範囲も広がると考え、寒冷地や小規模鉄骨造などへの応用も視野に入れた。

材料は、高速道路や港湾施設の衝突緩衝材に用いられていたポリエステル系熱可塑性エラストマーを選んだ。形状はほぼ仕口ダンパーに近いものからスタート。試作と実験を繰り返し、実大架構の実験も行い20年に完成した「耐震リングR10」は耐久性や施工性を仕口ダンパーから大幅に改善できることがわかった(特許成立は25年)。仕口の角度変化だけでなく「ずれ・はずれ」にバネのように抵抗できる耐震リングは、減衰性能に優れた仕口ダンパーと適切に組み合わせることができる。この技術では、伝統的あるいは在来の木造住宅も既存の構造体を撤去・解体または改変せずに補強が可能なのだ。

(一級建築士 樫原健一)


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