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「3カ月の居住で住民投票権」武蔵野市の条例案否決から見えた日本の低レベルな“多様性”

PRESIDENT Online

条例案を問う中で起こったヘイトスピーチ

なお、今回の条例案に反対した人たちが、反対する意見を出す中で、特定の国の人がその自治体を「侵略する」、「乗っ取る」、「虐殺する」と言ったり、外国籍の政治活動家の「強制送還」を求めたりといった、ヘイトスピーチを行ったことも問題とされている。

これらは、いわゆるヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)2条の定める「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」に当たる恐れがあることも報道されている。参議院議員の中にも、特定の国がその出身者を大量に転居させ、行政や議会も牛耳られるとツイートする人もいた。

日本が留保なく批准した部分である人種差別撤廃条約4条(c)は「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」を締約国の義務と定めている。この条文の意味を理解した言動が国会議員には望まれる。

武蔵野市の条例案へのリアクションは外国人への偏見を浮き彫りにした

法的拘束力のない諮問的な住民投票を「実質的参政権」と位置づける論理には、飛躍がある。また、経済生活その他の必要が居住場所を決めていること、市の空き室状況、同じ国籍でも政治判断は多様であること、外国人住民の投票率は経験上低いことなど、いくつもの前提を無視した荒唐無稽な差別的偏見を拡散することが、本邦外出身者を地域社会から排除する扇動となることを公務員は自覚する必要がある。

はからずも、武蔵野市の住民投票条例案をめぐって、差別や偏見の存在が改めて意識された。同質性を好む従来の日本社会にあって、外国出身者がもたらす多様性の豊かさと開かれた人権保障の重要性に着目しながら、これからの共生社会を築く新たな制度設計は、多くの自治体が模索しているところである。丁寧に偏見を解きほぐし、個人の尊厳と人権が尊重され、誰もが活躍できる地域社会づくりのための議論を今後は期待したい。


近藤 敦(こんどう・あつし)

名城大学法学部教授

1960年、愛知県生まれ。九州大学助手などを経て、2005年から現職。憲法、国際人権法、移民政策を研究。総務省や東海地域の多文化共生推進プランづくりに参加。著書に『人権法(第2版)』(日本評論社)などがある。

(名城大学法学部教授 近藤 敦)



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