スポーツのネット配信サービス「DAZN(ダゾーン)」が値上げを発表して大きな反響を呼んでいます。月額1925円が月額3000円に改定されるのです。ネットでは、タレントの伊集院光さんの「DAZNすげえな、えげつないや。」というツイートも多くの共感を集めているようです。
日本人の感覚だと「常軌を逸した」大幅値上げのようにみえるのでしょう。端数価格である「2980円」への値上げでないところが外資系らしい感じもします。
世界的にみても、消費者としての日本人の“値上げアレルギー”は相当なものなのですが、企業戦略としては非常に重要です。「値上げすると逃げる客が多い」といった程度であまり精密に捉えていない人が多いので、今回は「値上げ」を考えてみたいと思います。
「20%値上げしたら、売り上げも20%減る」は本当か?
まず簡単な算数の問題です。よく「20%値上げしたら、20%売り上げが減ってしまうかも?」という話がありますね。これは事実でしょうか?
▼売り上げは?
100円の商品で計算してみます。100個売れていた場合は…
100円×100個=10000円の売り上げ
20%の値上げで120円になり、20%減で80個しか売れなくなったら…
120円×80個=9600円の売り上げ
たしかに400円の売り上げ減少になります。よく聞く「20%値上げしたら、20%売り上げが減ってしまう」は計算上は正しいといえます。
▼利益は?
しかし、ビジネスで重要なのは利益です。利益を考慮して計算してみましょう。同じく100円の商品で、コストが50円だったとしましょう。すると元の利益はこうなります。
(100円-50円)×100個=5000円の利益
では、20%値上げして売り上げも20%減少したと考えると…
(120円-50円)×80個=5600円の利益
なんと利益は600円増、割合にして、値上げ前に比べて12%増となるのです。
▼20%の値上げ→利益の上昇率は40%
大事なポイントは20円の値上げは、消費者からみると元の売値100円に対して20%の上昇ですが、売り手から見ると利益50円が70円になるので上昇率はなんと40%ということです。いかがでしょうか。いかに「値上げ」が大きなインパクトを持つかを理解していただけたのではないでしょうか?
「値上げには仕入れコストはかからない」という当たり前の事実を見逃してはいけないのです。
原価9900円、売価10000円のものでしたら1%の値上げで10100円となると利益は100円から200円となり利益は2倍、200%となるわけです。
値上げに成功することは、あらゆる施策が可愛く見えるほどのインパクトを与えてくれることになります。
鳥貴族もユニクロも…失敗する値上げとは?
もちろん失敗する値上げ、つまり値上げで想定以上の売り上げの落ち込みとなってしまう例もあります。