米連邦準備制度理事会(FRB)が3月に事実上のゼロ金利政策を解除すると示唆し、日本の株式市場は大幅な下落を伴う「調整局面」に入った。急速なインフレ懸念に加え、ウクライナ情勢の緊迫化や新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染急増などの下押しリスクが複合的に絡み合うことで株価の振幅が拡大しており、下落がさらに進む恐れがある。
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27日午前の東京株式市場で、日経平均株価は前日終値比690円00銭安の2万6321円33銭と大幅続落した。下げ幅は一時700円を超え、取引時間中では令和2年11月以来、約1年2カ月ぶりの安値を付けた。
前日26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受け、コロナ禍の株価を下支えしてきた大規模金融緩和の引き締めが今春以降加速するとの警戒感が強まり、売り注文が優勢になった。
1月19日以降の日経平均株価の終値は2万7千円台で推移し、昨年9月14日に付けた高値(3万795円78銭)を大幅に下回る水準だ。一般的に、終値が過去52週間の高値から10%以上下落すれば「調整局面」に入ったと認識され、多くの投資家が市場の潮目が変わったことに身構えている。
インフレに歯止めがかからない中、市場はFRBが3月に利上げを開始し、国債など保有資産の圧縮にも前向きだと既に織り込んでいる。それでも株価が下落を続けるのは、今後の金融政策が読みづらいためだ。
パウエル議長は26日の記者会見で、3月以降では年内に7回あるFOMCの毎会合で利上げする可能性を排除しなかった。「(利上げは年内に3、4回と想定していた)市場はサプライズとして受け止め、さらに警戒感が広がった」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)。
足元ではロシアがウクライナに軍事侵攻する脅威が高まり、ロシアから欧州に供給される天然ガスや原油が滞る懸念からエネルギー価格は高騰している。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「衝突があった場合、エネルギー価格急騰が物価をさらに上昇させ、米国は利上げを加速する」と分析。金利が上がる米国に向けて資金が大規模に流出する新興国では景気が低迷し、世界経済の波乱要因になる。
加えて国内ではオミクロン株の拡大で27日までに計34都府県に蔓延(まんえん)防止等重点措置が発動され、個人消費が減退している。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「岸田文雄政権は厳格な行動規制が支持率に直結すると考える節がある」と指摘。行動制限の長期化を嫌気した海外投資家の〝日本離れ〟が進むことで、日本株の下落幅が特に拡大するシナリオに警戒感を強めている。
(西村利也)