【モスクワ=小野田雄一】ロシアによる侵攻が懸念されるウクライナ情勢をめぐり、北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大の確約などロシア側の要求への回答文書を米国が提示したことで、近く開かれる見通しの米露外相会談が今後の情勢を占う1つの試金石となりそうだ。
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タス通信によると、ラブロフ露外相は27日、回答文書について「NATO不拡大と露周辺への攻撃兵器の配備制限という主要な問題で肯定的ではない」と失望感を表明。ペスコフ大統領報道官も同様の見解を示した一方、「回答文書はプーチン大統領の手元にもある」とし、文章を精査した上でロシアは今後の対応を決定すると説明した。
プーチン氏は要求が拒否されれば「軍事技術的な措置」を取ると警告しており、情勢は予断を許さない。
ただ、露専門家の間では「プーチン氏が本気でNATO不拡大の確約を得られると考えている可能性は低い。交渉で欧米側から兵器配備や軍事演習の制限などの譲歩を引き出すための『高値設定』だ」との見方は強い。この見方に従えば、ロシアがウクライナ国境で進める軍備増強も交渉を有利に運ぶための演出にすぎず、実際に侵攻する可能性は低いことになる。
一方で、プーチン氏が欧米側の回答を「欧米側の責任で交渉が決裂した」と宣伝し、ウクライナ侵攻を正当化する口実に使う恐れも排除されていない。
ブリンケン米国務長官とラブロフ氏は21日のジュネーブでの会談で、欧米側の回答後に再会談することで一致している。回答の内容次第では交渉の打ち切りも示唆してきたロシアが、再会談の際に交渉の継続に応じるか否かで、今回の要求や侵攻をめぐる真意がある程度、判明する可能性がある。