“技巧を見せるのは野暮” ブルネッロ・クチネッリの新コレクションに見るイタリアの美学

    今回のコレクションは旅がテーマになっている。それに合わせ、「発券窓口(biglietteria)」を模したインテリアが演出されている。

    旅がテーマとなっている。発券窓口(biglietteria)が演出されている (c)KenAnzai
    旅がテーマとなっている。発券窓口(biglietteria)が演出されている (c)KenAnzai

    友人の建築家が試みていることを思い出した。彼はアルツハイマー認知症の人たちのための空間をデザインしている。病院の医師とつくったのは、鉄道の駅改札と車内のコンパートメントだ。

    認知症の人たちを旅の空間に連れ出すと、過去の記憶が蘇りやすいとの研究成果に基づくプロジェクトである。

    コレクションが旅をテーマにしたのは、言うまでもなく、人の移動そのものへの希求を想定しているのだろう。だが、過去への想いも同時に含んでいるのかもしれない。そのように思ったのは、前述の友人の試みと発券窓口が、ぼくの頭のなかで繋がったからだ。

    この2年間、内省的になることが多かった。そろそろ、外に向けて身体を動かしていくタイミングだと思った矢先、出鼻を挫かれた。このように感じている人も多いはずだ。

    まだ考え足りなかったのか?いや、いや、それを言い出したらキリがない。ただし、嘆いていても仕方がない。

    過去、現在、未来、もう少し縦横無尽に思いを巡らしてみよう。何かいいことがあるかもしれない。そう考えながら中庭を通り過ぎて街にでた。


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