ホームセンターの店頭に積まれたカルビーポテトチップスの巨大な袋。内容量は12リットルもあり、お徳用サイズにしてもいささか度を越している。パッケージこそ見慣れた「うすしお」味だが、よく見ると「ポテトバッグ」と書かれている。チップスではないのか…。実をいうと中身は「土」。ポテチの原材料であるジャガイモを“種芋“から自宅で袋のまま栽培できるという、SNSで話題の“変わり種”商品なのだ。一風変わっているのは袋だけではない。自宅で手軽にジャガイモが栽培できるよう、中身の土の開発には3年もかかったというから、ポテチの新商品開発に勝るとも劣らない企業努力も垣間見える。
「パクリ?と思ったらカルビーさん公式です」
「ジャガイモや土に触れる機会を作りたいとの思いで開発しましたので、SNSの反応は素直にうれしいです」。カルビーポテト(北海道帯広市)馬鈴薯事業本部の川崎滋生(しげき)さんが目を細める。
ポテトバッグはカルビーの原料部門が分離独立して設立された同社と、園芸用土を全国展開するプロトリーフ(東京)が共同開発。ポテトチップスが入っているとしか思えない見た目のインパクトから、短文投稿サイトのツイッターでは「でっかいポテトチップスだなと思ったら、ジャガイモ用の土だった」「パクリ?と思ったらカルビーさん公式です」といった投稿が相次いでいる。店頭で商品を目にした人が写真とともに「ポテチデカすぎやろ!?」などと書き込んでいるのだ。園芸用品がここまで「バズる(話題になる)」のは異例だろう。
ポテトバッグは、軽くて持ち運びしやすいココヤシピートやハスクチップなどを培養土に採用。袋に入ったままの培養土に別売りの栽培用種芋「ぽろしり」を植えつけ、水やりをするだけで誰でも手軽にジャガイモを収穫できるという。川崎さんは「ベランダでプランター栽培をしたとしても、残った土をどうするのという問題があります。そこで燃えるゴミで捨てられる素材を使い、ジャガイモ栽培にチャレンジしやすい形を考えました」と語る。培養土は100%植物原料由来。ポテトバッグの土は栽培後、燃えるゴミとして廃棄することができるというが、自治体によっても異なるため確認が必要とのことだ。
プロトリーフ広報部の平田涼子さんは「自宅でジャガイモを育てて、おやつのポテトチップスになるまで手をかけていただく。そんな形で園芸を身近に感じてほしいという思いがありました」と話す。
当然のことながらジャガイモは通常、畑で栽培される。鉢植えやプランター栽培で人気があるのはトマトやピーマン、キュウリなどだ。ジャガイモを自宅で栽培するのは珍しく、ジャガイモのスペシャリストであるカルビーポテトの川崎さんも「そもそも最初は袋でジャガイモを栽培するという知見がありませんでした」と振り返る。