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仮想空間に「もう1つの現実世界」 デジタルツイン活用で社会はどう変わるのか

仮想空間に現実の世界を再現した「デジタルツイン」を街づくりに生かし、社会や生活を進化させようという取り組みが全国各地で始まっている。国土交通省や東京都などは、デジタルツインの基盤となる3Dデジタルマップの作成を主導。これに民間の情報を組み合わせるなどして、仮想空間にデジタルツインを作り上げ、現実世界の代役として自動運転などの先端技術の導入や災害対策の立案などに役立てる構想だ。ただ、デジタルツインの有効性を維持するには、日々変化する現実世界に即した形で3Dデジタルマップの更新を続けなければならない。デジタルツインの可能性を広げていくには、官民挙げた取り組みの必要性が指摘されている。

デジタルツインの手法を使って社会や生活を進化させる試みが始まっている(Getty Images)※画像はイメージです
デジタルツインの手法を使って社会や生活を進化させる試みが始まっている(Getty Images)※画像はイメージです

■自動走行を裏付け

東京・丸の内のオフィスビルからゆっくりと現れた高さ1メートルほどの自動走行ロボット。歩道を越え、歩行者天国の石畳を進み、路上のテラス席までビル内のスターバックスから運んできたコーヒーを届けているのだ。丸みを帯びたボディのロボットが、傍らを歩く「付き添い」のスタッフと一緒にカタカタと進む姿はさながら「初めてのおつかい」といった風情がある。もちろん親しみやすい外見とは裏腹に、最新の技術も搭載。後部のモニター画面には道路や建物の輪郭が描かれ、周囲の状況にあわせて「obstacle(障害物)」「unknown(不明)」といった言葉や立体図形が浮かぶ。

東京・丸の内での実証実験に登場した自動走行ロボット(SankeiBiz編集部)
東京・丸の内での実証実験に登場した自動走行ロボット(SankeiBiz編集部)

1月22~25日に行われたこの実証実験は、大手町・丸の内・有楽町の「大丸有」地区のスマートシティ化に向けた取り組みの一環。自動走行ロボが進む様子や、モニター画面の電脳感あふれる見た目に関心が向きがちな内容だった。

しかし今回の実証実験の真髄は別にある。モニター画面に映し出された道路や建物の輪郭を描く過程でデジタルツインの手法が用いられた点だ。

■バーチャル測量でデータを収集

デジタルツインは仮想空間に再現された現実の「双子」を意味する用語。街づくりに生かす場合は、現実の土地の起伏や建物の位置、形状を、建物の素材や構造、用途などのデータとひもづけてサイバー空間に描くことで、災害時の被害発生や人の流れなどをシミュレーションすることができる。東京都は2021年度からデジタルツインの実装に向けた動きを本格化させ、その基盤となる3Dマップデータの拡充も進めている。

今回の実証実験にあたっては、東京都の3Dデジタルマップデータと三菱地所グループが手がけた周辺ビル内部の建築データを活用した仮想空間で「バーチャル測量」が行われた。狙いは3次元空間における物体の位置をX軸、Y軸、Z軸の数値で示した「点群データ」の作成。自動走行ロボが自分の位置を正確に推定するために不可欠なデータだ。

通常の自動走行実験では、人間が実際に現地をレーザースキャナーで測量して点群データを作成する。今回も比較のために実際の測量が行われ、実測とバーチャル測量のデータの違いは極めて小さいことが分かった。デジタルツインの有効性が確認された形だ。点群データの作成を担ったアイサンテクノロジー(名古屋市)の村上真里南さんは「実際に測量を行わなくても点群データを作成できるので、コストや手間を省くことができる」として、自動運転活用の範囲を広げやすくなる意義を強調する。

実は今回の実証実験で付き添いのスタッフがいたのは、法律上の要請があったためだ。実際には完全な自動運転で走行する能力があるという。


■「インターネット黎明期」に相当

デジタルツインをめぐっては、国交省も「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」として3D都市モデルの構築に取り組んできた。2021年3月には全国56都市の情報の整備が完了し、東京23区から公開を開始。東京都の取り組みもプラトーと連携している。


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