急速な情報通信技術(ICT)化や少人数学級の導入など教育が新たな局面を迎える中、教員不足と低調な採用試験という懸念すべき現状が31日公表の文部科学省の調査で浮き彫りになった。教員不足には地域差がみられるなど、一律の対応では改善が見込めない可能性がある。文科省は各教育委員会のヒアリングなどを進めて「子供の人口の自然減を踏まえながら、計画的な配置を考えたい」としている。
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教員不足は東京周辺で目立つ。令和3年度当初を小学校で比べると、東京都が不足ゼロなのに対し、隣接する埼玉県は168人(不足率1・07%)と不足した人数としては全国で最も多かった。千葉県78人(同0・56%)と神奈川県93人(同1・10%)も高水準だ。地域内でも格差があり、千葉市では不足ゼロ。さいたま市は不足1人(同0・03%)、横浜市は不足5人(同0・05%)だった。
ただ、地域によっては、教員不足を見越して年度当初の配置目標を低く見積もっている可能性がある。このため、地域差の実態が完全に反映されていない可能性があり、文科省も「今回の調査には限界がある」としている。
教員不足の背景にあるのは、戦後のベビーブームに誕生した団塊の世代の大量退職だ。平成19年に団塊の世代の定年退職が始まり、それに対応した大量採用で若返りが図られた。その結果、ベテラン層が薄くなり下の世代の業務負担が増加。一方で、大量採用世代は現在、子育て期に重なり産休、育休に入る教員も多く、不足の要因と考えられるという。
採用試験競争率が低調に推移しているのは、比較的好調な民間の雇用市場の存在がある。令和2年度の小学校教員の競争率は、バブル景気の影響で民間採用が好調だった平成3年度を下回り、中学校も同年度に次ぐ低水準。質の高い教員確保に向けた大きなマイナス要素となっている。
教育現場は現在、ICTを熟知した教員や高校の新設科目「情報」の専門教員の確保に加え、小学校の35人学級化や高学年での教科担任制の本格導入などへの対応を急ぐ必要がある。文科省は、今後の子供の人口減なども見越し、「受験者数が確保できれば採用試験の競争率も上がるのではないか」としているが、具体策は今後の検討になる。