オミクロン拡大と経済維持 人手不足感強まる

    厚生労働省が1日発表した令和3年平均の有効求人倍率は1・13倍で、前年を0・05ポイント下回り3年連続の低下となったが、今年は一転して人手不足感が強まりそうだ。足元では新型コロナウイルスのオミクロン株拡大で濃厚接触者が増え現場の人員が足りなくなっている上、ウイルスと共存する〝ウィズコロナ〟経済が定着すればコロナ禍で緩和された労働力不足が再燃する。企業は昨年後半から徐々に懸念を強めており、景気の下押し材料になる恐れがある。

    厚生労働省=東京都千代田区
    厚生労働省=東京都千代田区

    「人手不足感の強さを背景に、企業の採用意欲は高まっている」-。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長はこう指摘する。

    昨年秋の緊急事態宣言解除で雇用情勢は年末にかけ対面型サービス業を中心に持ち直し、企業からの求人数(有効求人数)は12月まで6カ月連続で上昇した。

    年明け以降の感染「第6波」で改善は足踏みを余儀なくされる。ただ、企業は待機対象者の爆発的増加で生産や販売現場の人繰りに支障が出かねず、スーパーで従業員を衣料品から食品売り場に回すなど、営業活動を必死に維持している。

    一方、人手不足が本格化するのは第6波の収束後になりそうだ。帝国データバンクが昨年11月に実施した景気見通し調査では、令和4年の懸念材料として人手不足を挙げた企業は3割に上り、原材料高や感染拡大に次ぐ下押し要因とみられている。コロナ禍でも人手不足が続いていた建設業などで特に懸念の声が強い。

    担当者は「デジタル化など生産性向上で人手不足を解消した企業は一部にとどまり、多くはコロナ禍で一時的に和らいでいただけ」だと指摘。ウィズコロナで業務量が増えれば再び労働力不足が強まりかねない。

    特に懸念されるのは断続的な営業自粛にさらされた飲食業だ。急な休業やシフト削減で雇用が不安定化し他業種に移った従業員も多く、ウィズコロナ経済で労働力が戻るか見通せない。

    従業員の退職や採用難で事業が継続できない「人手不足倒産」(負債額1000万円以上)は、帝国データの集計で昨年は104件と2年連続で減少したものの、今年は採用難の深刻化で増加に転じる可能性がある。

    (田辺裕晶)


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