一人だけオンライン会議で“のけ者”にされる…「職場のいじわるな上司」からわが身を守る方法

    PRESIDENT Online

    多くの企業でメンタルヘルス研修の講師をする見波利幸さんは「コロナ禍でのコミュニケーションスタイルの変化が、新たな嫌がらせやいじめを生み出している」という。その実例と対応法を紹介する-。

    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut
    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

    マニュアルを渡すだけでサポートなし

    リモートワークの浸透は、これまでの働き方を大きく変化させました。「時間を効率よく活用できる」「ライフ・ワーク・バランスをとりやすい」など、リモートワークのメリットを感じている人も多いでしょう。

    ただその一方で、インフォーマルな場が激減したことによるコミュニケーション不足が、職場の人間関係に影響を与えることも心配されています。

    あちこちで聞かれるのは、リモートワークの前提となるセキュリティ対策でつまずくケースです。ITスキルが高い人にとっては難なくできる設定作業も、普段使い慣れていない人にとっては煩雑で、また不安も大きいものです。しかし、マニュアルをポンと渡すだけで、なんのサポートもないという職場も多いようです。当然、設定が完了するまでは本来の業務もできず、仕事も滞ります。

    ただでさえ慣れない作業で不安感を抱えているところに、上司から「まだセキュリティ設定も終わらないのか」「マニュアルを渡しているのに、何をモタモタしているんだ」と叱責され、強いストレスを抱えてしまったという声も聞きます。

    悪意なきパワハラ

    セキュリティ設定だけでなく、リモートワークに必要なさまざまなツールの導入においても、同様のことが起きています。スムーズに使いこなせる人ばかりではなく、慣れるまで操作に手間取る人もいるでしょう。そうした人に対して、叱責したり、「スキル不足」のレッテル貼りをするのは、もはや指導ではなくパワハラです。

    ただ厄介なのは、パワハラ発言をしてしまう上司に悪気がないケースがほとんどであること。困っている社員に適切なフォローをしないのは、「在宅ワークの環境づくりは、個人が責任を持って行うのが当然」と考えているため。ただし、業務が滞るのは困るから、注意をする。これが当の部下にとっては非常なストレスとなるわけです。とくにIT系の企業では、できて当たり前と考えられることが多いため、そのストレスは一層強くなる傾向が見られます。

    立場逆転!折り合いの悪かった上司からしっぺ返し

    リモートワークの特性を利用した嫌がらせや、いじめの相談も増えてきています。

    リモートワークによって、表面上は取り繕っていた人間関係のほころびがあらわになってしまった、という事例をご紹介しましょう。

    課長のAさんは、課内のBのことを内心苦々しく思っていました。BはAさんよりも年上なこともあってか、会議ではAさんの発言を遮って反対意見を述べたり、課内のメンバーにAさんへの不満を吹聴したりと、自分の優位を印象付けるように振る舞うところがありました。課内のメンバーは、「Bさんの機嫌を損ねると面倒だ」と同調。結局、AさんもBの意見を無下にすることはできず、計画や納期の調整をするなど骨を折ってきたのです。

    ところが、コロナ禍によるリモートワークへの移行で状況は一変しました。

    Bは、不満をぽそっと小声でつぶやく、Aさんの発言中にため息をつく、ボールペンをカチカチ鳴らしていら立ちをアピールするなど、会議室の空気を支配することを得意としてきました。しかし、オンラインミーティングでは、そうした行為は画面に拾われません。誰かの発言に割り込むこともマナー違反。Bの得意な「場の雰囲気づくり」が通用しなくなり、一人ひとりがBの顔色を伺うことなく意見を述べるようになったのです。

    簡単に「のけ者」にされる危険性

    さらに、Aさんはこれまでの鬱憤を晴らすかのように、B以外のメンバーにばかり発言を求め、まるでBがいないかのように扱います。これまでの「Bファースト」なやり方はすっかりAさん流に改められ、Bの求心力は急低下してしまいました。

    上司にマウントをとるようなBの日頃の態度が招いたこと、と言えばそれまでですが、オンラインでのコミュニケーションが持つ危険を示唆する事例とも考えられます。ビデオ会議では、誰かをのけ者にしたり、意図的に発言させないようなことも簡単にできてしまう、ということです。さらに、オンライン会議は退室すれば、そこで終わり。フォローや弁解の機会もないため、どんどん関係が冷え込み、修復できないところまで悪化してしまう可能性もあるのです。

    「のけ者」の標的になるのを避けるためにも、こうしたオンラインコミュニケーションの性質を理解し、これまで以上に、普段から良好な関係を築いておく努力が必要になります。


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