「宇宙開発カレンダー2022」…ISS廃棄後の470億円ステーション計画、火星入植へのカウントダウン始まる

大規模な宇宙開発計画がいくつも動きだす2022年。史上最大のロケットがデビューし、巨額の予算のもと宇宙ステーションが設計され、さらに火星探査が進められ、世界に配信される宇宙関連のニュースは劇的に増加することになるだろう。今年はこれから何が起きるのか? 前回は「月開拓」を取り上げた。今回は「新型ロケット」「宇宙ステーション」「火星探査機」の3領域を俯瞰するため、独自にカレンダーを作成してみた。イーロン・マスクが掲げる「2050年火星入植」へのカウントダウンはすでに始まっているといえる。

2022年にデビューする各国各社の新型ロケット

SLSはRS-25エンジンを第1段に4基搭載。スペースシャトルの打ち上げ能力が低軌道へ27・5トンだったのに対し、SLSはその4.7倍の130トン(NASA)
SLSはRS-25エンジンを第1段に4基搭載。スペースシャトルの打ち上げ能力が低軌道へ27・5トンだったのに対し、SLSはその4.7倍の130トン(NASA)

スペースX社の「ファルコン9」は、再利用型ロケットと呼ばれている。打ち上げ後に切り離された第1段ロケットは、予定ポイントに自動帰還し、垂直姿勢で自律着陸するため、再び使用することができるのだ。ペンシル型のロケットにおいて、再利用型として実用運用されたのはファルコン9が史上初である。

ファルコン9が自律着陸にはじめて成功したのは2015年。ただでさえ製造コストが安いファルコン9はその驚異的なシステムによって、打ち上げコストを他社の半額程度まで低減した。この事態に危機感を感じた既存メーカーは、低価格な新型ロケットの開発を続々と発表したのだが、この2022年、それら新型ロケットが一斉にデビューする。

「新型ロケット」カレンダー(筆者作成)

▼NASA「SLS」

NASA(米航空宇宙局)の「アルテミス計画」で使用される超大型ロケット「SLS」は今年3月に打ち上げを予定している。スペースシャトルのメインエンジンRS-25を流用したSLSは、無人のオリオン宇宙船をDRO(Distant Retrograde Orbit)と呼ばれる特殊な月周回軌道に送り込む。月の周りを非常に大きな半径で周回するこの軌道に、宇宙機が投入されたことはかつてない。

▼スペースX「スターシップ」「スーパーヘビー」

スペースX社が開発する史上最大の打ち上げシステム「スターシップ」の軌道航行テストも、2022年の早い時期に予定されている。ロケットの第2段の役目も果たす宇宙船スターシップ(全高50m)は、単体での打ち上げテストが過去5回行われ、高度12.5㎞からの自律着陸に成功。次に行われるテストでは、このスターシップを超大型の第1段ロケット「スーパーヘビー」(全高70m)の上段に搭載し、テキサス州の射場から東に打ち上げ、地球(準)周回軌道に乗せてハワイ沖に着水させる予定だ。

超大型ロケット「スーパーヘビー」の上段として宇宙船「スターシップ」を搭載。ヒレのような突出部は降下時に使用される舵。機体側面のウロコ状のものは耐熱シールド(SpaceX)

▼JAXA「H3」

JAXAの次期基幹ロケット「H3」の初打ち上げも3月までに予定されていたが、エンジンの振動に起因する課題が解消できず、1月下旬に延期が発表された。その代替日はいまだ公表されていない。

H3は、これまでの基幹ロケット「HII-A」と、その派生型「HII-B」の後継機として開発された。最大全高は63m。H-IIBよりも6.4m高く、40トン以上重く、よりパワフルであり、打ち上げコストは約50%に抑えられる予定だ。

ポストISS時代、どのステーションが実現する?

ナノラックス社の「スターラブ」。その開発費用としてNASAから1億6000万ドルの資金を供与された(Nanoracks)

NASAは2021年、老朽化したISS(国際宇宙ステーション)の後継機の開発を、在米の民間会社に委託する「CLDプロジェクト」を発表した。CLDとは「Commercial LEO Destinations」の略号であり、直訳すれば「商用・低軌道・目的地」となる。つまり、地球を周回する低軌道に宇宙港となる宇宙ステーションを建設する計画だ。この募集に対して在米企業から10件以上のプランが集まったという。

▼3社に絞られたパートナー企業

そして同年12月2日、同計画におけるパートナー3社が選定された。その3社とステーション名、それぞれに対する資金提供額は以下の通り。その資金額はトータル4億1560万ドル(約470億円)に及ぶ。

■ナノラックス社

 └「スターラブ」(1億6000万ドル)

■ブルーオリジン社

 └「オービタル・リーフ」(1億3000万ドル)

■ノースロップ・グラマン社

 └「ノースロップ・ステーション(仮名)」(1億2560万ドル)

各社はこの資金をもとにコンセプトを固め、予備設計に入る。ただし、今回のコンペは二段階ある選定のうちの最初のもので、今後さらに絞り込まれる予定だ。

「アクシオム・ステーション」はまずISSのモジュールとして活用。ISSが破棄されたあとは、その複数のモジュールと太陽光パネルで独立して運用される(Axiom Space)

また、「アクシオム・ステーション」を開発中のアクシオム・スペース社は、今回の選定以前の2020年1月、NASAから1億4000万ドルの資金提供を受け、すでにモジュールの予備設計に入っている。

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