食料品の値上げラッシュが起きている。いつまで続くのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「オイルショックのときと同じ“悪いインフレ”が起きている。これから家計は真綿で首を絞められるようにゆっくり苦しくなる」という--。
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値上げラッシュはグローバルな要因で起きている
2022年は値上げラッシュの1年間になりそうです。1月は小麦価格の値上がりでパンや小麦粉、パスタなどが3~9%ほど値上げされました。2月から3月にかけては牛・豚・鶏などの食肉価格の値上がりによるハムやソーセージの値上げや、マヨネーズや冷凍食品の値上げ、昨年から数えて5度目のサラダ油の値上げが予定されており、4月にはついにウイスキーまで値上げ品目入りします。
生活必需品が次々と値上げされていくということで消費者にはたまらない状況です。関心事としては、「いつまで続くのか?」「どこまで上がるのか?」ですが、実は値上げラッシュが起きている背景事情を知れば知るほど、悪い未来が予想できるのです。今回は生活防衛のために、その値上げラッシュのメカニズムについてなるべくわかりやすく解明してみたいと思います。
今起きている値上げラッシュは3つの要因で起きています。残念なことに3つとも日本政府がコントロールできないグローバルな要因です。それは、
1.物不足
2.原油高
3.円安
の3つです。
「物不足」は需要の回復によるもの
まだオミクロン株が猛威を振るうさなかではありますが、ひとつめの「物不足」は、新型コロナのワクチン接種と治療薬の承認で、世界経済がようやく元に戻る方向に動き始めたことがきっかけです。
昨年の秋、人々の外出が増え、消費意欲も増したことで、世界で一気に需要が増えました。同じタイミングで、会社や工場に労働者が戻り生産拡大が始まりました。ところが、生産が再開されてからその商品が届くまでには、必ず数カ月のタイムラグが発生します。
つまりコロナからの回復期には世界的に、先に需要が立ち上がって、商品の供給は遅れて立ち上がる。このことで物不足が起きることになります。
農作物の世界的な価格上昇が起きている
そのような物不足は工場であれば数カ月で回復するかもしれませんが、実は今問題になっているのは世界的な農作物の価格上昇です。新型コロナの影響で、農業も20年、21年と世界的に活動が抑えられてきました。いざ経済が回復しようとしたら農作物の数が足りない。ですから小麦粉、油からコーヒーまで農作物の価格が世界的に上昇します。
これが工場の製品とは違って数カ月ではなく1年は続くことになります。食肉の値上がりも同じで、畜産農家ではコロナで需要が減って減産したうえに、飼料となる穀物の国際相場が値上がりして生産コストが上がってしまいました。これから出荷される肉の価格は上昇せざるをえないのです。
「原油高」の背景は政治的なもの
さて2番目の要因の「原油高」についても状況は深刻です。都内のガソリン価格は1リットル=167円まで値上がりしています。世界的に石油の需給がひっ迫しているのですが、その原因をひとことで言えば、産油国が必要以上に石油の供給を絞っているのです。おそらくその理由は政治的なものです。