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生き物のような躍動感 アートな学術資料「透明標本」

生物の肉質を残したまま透明にして骨を染めた「透明標本」の作家として活躍する冨田伊織さん(38)の作品約300点が、さいたま市浦和区の同市青少年宇宙科学館で展示されている。カメレオンにリクガメ、クロウミウマ…。さまざまな生物の色鮮やかな標本は、学術資料であると同時に躍動的な芸術作品にも映る。透明標本を「僕にとっては生き物」と語る冨田さんにその魅力を聞いた。

冨田伊織さんが作ったジャクソンカメレオンの透明標本(©New World Transparent Specimens/Iori Tomita)
冨田伊織さんが作ったジャクソンカメレオンの透明標本(©New World Transparent Specimens/Iori Tomita)
透明標本を作る冨田伊織さん。高い透明度にこだわり、丹精を込めて仕上げる(本人提供)
透明標本を作る冨田伊織さん。高い透明度にこだわり、丹精を込めて仕上げる(本人提供)

冨田さんは埼玉県狭山市出身。子供の頃から釣りや魚を飼うことが大好きで、北里大水産学部(現・海洋生命科学部)に進学し、初めて透明標本と出会った。

透明標本は本来、小さな生物の骨格を研究するための素材だが、冨田さんを強く魅了したのはその美しさだった。

冨田さんが作ったリクガメの透明標本(©New World Transparent Specimens/Iori Tomita)
冨田さんが作ったリクガメの透明標本(©New World Transparent Specimens/Iori Tomita)

「透明な姿に驚いた。学術はそっちのけで、標本を自分のものにしたい欲求が生まれた」

入手方法がなかったため「ならば自分で作ればいい」と考えて標本作りを始めた。大学卒業後の平成20年、東京都で開かれたアートイベント「デザインフェスタ」に出展したところ、「来場者が押し寄せて自分がブースに入れないほど」の大盛況に。手応えを感じた冨田さんは「透明標本作家」を生業(なりわい)にすることを決意した。

透明標本は骨を薬品で染色し、酵素を使って筋肉を透明化する作業などを経て完成する。学術的な用途に限った場合、それほど高い透明度は必要とされず、数日程度で作ることも可能という。

しかし、冨田さんは澄み切った仕上がりにこだわって作るため、メダカ程度の大きさの標本でも完成までに約半年を要するそうだ。

丹精を込めて作り上げただけあって、冨田さんの透明標本はまるで生きているかのような躍動感に満ちている。例えばカメレオンの標本は、今にもこちらへ向かって舌を伸ばしてきそうな印象を与える。

透明標本は「アート」なのか、「サイエンス」なのか―。

「見方はその人の自由です。僕は『生』のイメージを感じてもらえればと思って作っている。生き物の『生きている一瞬』を切り取るように」

(兼松康)

冨田さんの作品を展示している企画展「スケルと、ん⁉ 魅せる骨たちの透明標本展」は3月21日まで。入場無料。休館は月曜(休日の場合は次の平日)。


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