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医療ロボットで出遅れた日本が国産化に成功した理由 「火の鳥」がつないだ不思議な縁

日本は産業ロボット大国でありながら、医療用ロボットの歴史はまだ浅い。日本初の医療用ロボットメーカーであるメディカロイドの設立はわずか約8年前だ。当時、国内で実用化されていた医療用ロボットは当然、全て海外製。ロボット工学が専門の同社経営企画部長、田村悦之さんは「日本の技術でなんとか医療に貢献したいという思いがありました」と振り返る。米メーカーに後塵を拝していた日本で、医療用ロボットメーカーが設立される契機となったのは1本の電話だった。

手塚治虫の名作「火の鳥」が引き合わせた不思議な縁から国産初の手術支援ロボットの開発が始まり、手塚プロダクションからも賛同を得て「ヒノトリ」と命名された(SankeiBiz編集部)
手塚治虫の名作「火の鳥」が引き合わせた不思議な縁から国産初の手術支援ロボットの開発が始まり、手塚プロダクションからも賛同を得て「ヒノトリ」と命名された(SankeiBiz編集部)

「日本の技術が劣っているわけではない」

「医療用ロボットに興味はないか」。産業用ロボットの国産化に初めて成功した川重でロボットビジネスセンター長などを務めた橋本康彦氏(現川崎重工業社長)が、医療検査機器大手シスメックス執行役員だった浅野薫氏(現メディカロイド社長)に電話口で切り出した。

2人は互いに20代の頃からの旧友。しかも当人たちにとっても意外な共通点があった。医師免許を持っていた手塚治虫の代表作「火の鳥」の愛読者だったということだ。永遠の命とは何か、人間とは何かを壮大なスケールで問い続けた長編大作に現れる、不死の血を持つ「火の鳥」が引き合わせた不思議な縁と言ってもいいかもしれない。

2人はすぐに意気投合。医療用ロボット製造に向けた勉強会を立ち上げると、川重、シスメックスの2社から技術者が数人ずつこれに加わった。こうして2013年10月、川重とシスメックスが50%ずつ共同出資した新会社メディカロイドが設立される。

産業用ロボットは日本と欧州で世界シェアの8割を占める一方、医療用ロボットになると9割がアメリカだという。患者の命にかかわる製品というリスクの高さから、日本では実用化止まりで商品化には至らなかった。日本の出遅れは「日本の技術自体が決して劣っているわけではなく、リスクの高さ自体に原因があった」(山本さん)ともみられている。

だが、メディカロイドの設立は、アベノミクスを掲げた2度目の安倍晋三政権の発足1年目。成長戦略で医療・介護分野やロボット産業の育成が重要施策と位置付けられたことも川重とシスメックスの背中を押した。新会社のメディカロイドでは橋本氏が社長に、浅野氏が副社長に就いた。

メディカロイドが目をつけた課題は「内視鏡手術」の難しさだ。内視鏡手術では、内視鏡を操作する助手の医師と、執刀医がいかに息を合わすことができるかに熟練の技が求められる。執刀医は患者の腹部に入れた内視鏡を見ながら手術器具を扱うことになるが、内視鏡の映像を見ながら手術器具を動かすと、患部では上下左右が逆になるといった特性もあり、「習熟に時間がかかっていた」(山本さん)という。

川重が持つ産業用ロボットの技術と、医療機関にネットワークをもつシスメックスがノウハウを持ち寄り、国産初の手術支援ロボットの開発は2015年から始まった。特に安全面に心を砕きつつ開発が進められ、日の目を見るまでに5年の歳月が流れた。医師の感覚を工学的な数値に変換して製品開発に取り入れることに最初は苦労したが、医師とともに開発を推進する中で、医師が求めていることを理解し改善を実施できるようになっていったという。


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