毎年2月から3月にかけては、所得税の確定申告時期となります。最近はシェアリングエコノミーが浸透し、収入を得ているにもかかわらず税務調査の対象になっているケースが増えています。どのような事例があるのでしょうか。
令和二事務年度の調査結果
聞き馴染みのない事務年度という言葉から解説します。事務年度とは、法人税、所得税に関する事務を執り行うために設けられた年度です。毎年7月1日から6月30日までが一事務年度となります。これに対して、個人の所得税の課税対象期間は、毎年1月1日から12月31日まで、国や地方自治体の会計は毎年4月1日から3月31日まで、企業の場合は企業毎に設けた決算日を境に一年間の所得(利益)を申告します。年度といっても職場によって時期が異なることがわかります。
令和二事務年度ではシェアリングエコノミー関連で1,071件の税務調査が行われ、1件あたりの申告漏れ所得金額は1,872万円でした。所得税の税務調査全体では1件あたり1,480万円の申告漏れでしたから、シェアリングエコノミー関連の方が、申告漏れの金額が多いことになります。
シェアリングエコノミー関連の追徴税額は、1件あたり494万円となり、所得税の税務調査全体では1件あたり275万円でしたから、1.8倍の追徴税額となり、総額53億円の追徴課税となりました。
シェアリングエコノミー関連のビジネス分類による、所得漏れ金額は1位ネットトレード2,456万円、2位ネット広告2,253万円、3位その他(分類できず)1,966万円、4位デジタルコンテンツ1,572万円、5位シェアリングビジネス1,208万円、6位ネット通販等1,166万円です。
シェアリングエコノミーで稼ぐとは、実際にどんなビジネスなの?
シェアリングエコノミーもいくつか分類されています。
申告漏れ金額1位であり、税務調査対象件数も1位であるネットトレードは、FXなどのネットを介した売買、暗号資産が含まれています。暗号資産を用いた物品売買でも暗号資産自体に利益が出ていれば課税が発生するので要注意です。
申告漏れ金額2位のネット広告はアフィリエイト収入です。アフィリエイト収入は、最近広告であることを伏せて送客するステマ方式が問題になっていますが、それ以外にも案件紹介などの対価として成果報酬を受け取る方式もあります。
ASPと呼ばれるアフィリエイトサービスプロバイダーを通じて、案件の情報、送客情報の管理、金銭の授受が行われます。上場している企業もありますが、アフィリエイト報酬に関する支払調書の発行は「しない」ことが前提になっているようです。
今後は、支払調書の発行と源泉徴収に関してプラットフォーマーとして国税庁から指摘されて然るべきでしょう。
4位のデジタルコンテンツは、個人が受注する場合に源泉徴収なしで費用を振り込む場合であれば、支払調書を発行しない限り売上の計上漏れが発生しそうです。また、法人で案件を受注しておいて、個人の銀行口座に振り込ませる個人事業者は、筆者が確認しただけでも複数存在します。税理士が関与していればしっかりと申告しているでしょうけれど、収入が少ない場合は無申告を意図して個人口座に振り込ませている可能性もあります。
5位のシェアリングビジネスは民泊、カーシェアリング、クラウドソーシングなどとしています。所得税の申告漏れの流れは用意に想像が付きます。自宅で部屋を貸すような方法であれば、個人間の現金でのやりとり、または民泊サイト経由での資金の移動となります。クラウドソーシングであれば、高額な受注を個人で受けてポータルサイト経由でのお金のやりとりです。
不動産投資の場合、家賃収入は家主と入居者間で直接やりとりするケースであれば、申告漏れの発生する余地が大きそうです。昔からの地主や大家であれば、税務申告は当たり前ですが、民泊などの場合は確定申告する必要性を知らない人がいる可能性もあります。