東京都が沖ノ鳥島のVR制作へ 国境離島の情報発信強化

    沖ノ鳥島の周辺海域で作業する調査団のメンバーら=昨年12月(東京都提供)
    沖ノ鳥島の周辺海域で作業する調査団のメンバーら=昨年12月(東京都提供)

    東京都は4月から、国境離島である沖ノ鳥島と南鳥島の情報発信を強化する。沖ノ鳥島の調査や空撮は実施済みで、実際に島にいるような感覚で楽しめるVR(仮想現実)コンテンツなどを制作する。「東京が尖閣諸島を守る」と宣言し、購入を目指した石原慎太郎元知事が1日に死去したが、その当日、小池百合子知事は「強い思いを受け継ぎたい」と語っていた。国境離島の安全保障環境は厳しく、言葉通りに、離島の保全強化に注力する。

    都は昨年12月2~10日、東海大の協力を得て、沖ノ鳥島の調査を実施した。調査団は東海大の海洋調査船「望星丸」に乗り込み、静岡県・清水港を出港。片道3日間かけてたどり着き、気象観測や海洋観測、プランクトンなどの生息実態調査のための海水採取を2日間にわたって行った。

    「台風の通過直後でもあり、風や波が非常に強かった。私は大丈夫でしたが船酔いに悩まされたメンバーもおり、季節やタイミングにもよるのでしょうが環境の厳しさを実感しました」

    調査団の一員で都小笠原・国境離島担当課長の苧園直秀さんはこう振り返る。都は調査結果を今年度中に報告書に取りまとめ、公式サイトで公表する。

    ドローンで島の空撮

    この調査の際、都はドローンを使った島の空撮も行っていた。

    撮影した映像を使い、4月からはVRの制作に着手する。実際に沖ノ鳥島にいるような臨場感で、旅気分に浸れる映像をスマートフォンやパソコンで視聴するアプリなどを想定する。都民・国民誰でもアクセスできるような仕組みを目指している。

    また、南鳥島の調査や撮影を行い、沖ノ鳥島と同様のVR制作も検討するほか、沖ノ鳥島の調査結果を基にシンポジウムなどの開催も予定する。国境離島の保全や強化には具体的な活用が欠かせないことから、漁業や観光など島を生かせる分野を探る。

    都はこうした国境離島の保全事業として、令和4年度当初予算案に1億円を盛り込んだ。

    資源争奪戦の舞台

    国境離島対策は小池氏の肝いりでもある。

    小池氏は2年10月に都庁内に国境離島の専任部署を設置し、直後に当時の小此木八郎領土問題担当相と面会した。沖ノ鳥島と南鳥島の情報共有などを要請し「安全保障の観点も踏まえている」と述べた。都は3年度から新たに予算を計上し、調査事業などをスタートさせている。

    実際、両島の安全保障環境は厳しい。中国政府は沖ノ鳥島について、排他的経済水域(EEZ)の設定が認められない「岩」と主張し、日本政府に無断で周辺海域での海底地形調査を繰り返す。南鳥島の周辺には、ハイテク産業に欠かせないレアアースが世界需要の数百年分眠っているとされる。今後、資源争奪戦の舞台になりかねない。

    安全保障に直結する重要な国境離島といえ、いずれも都に所属している。ただ、都民・国民の理解度は決して高いとはいえない。苧園さんは「まずはVRで楽しんでもらい、それを入り口に島の環境や重要性に関心を持ってもらえるような取り組みをしていきたい」と語る。(大森貴弘)


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