12日に東京都立川市で指された王将戦七番勝負第4局を制し、5つ目のタイトル「王将」を獲得した藤井聡太五冠は対局後、記者会見に臨んだ。全8タイトルを同時に保持する「八冠」について、「具体的に目指すということではないのかなと思います。実力を高めていくことで、そういったところに少しでも近付ければと思っています」と語った。
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会見での主なやりとりは以下の通り。
――五冠は大山康晴十五世名人、中原誠永世棋聖、羽生善治九段に続いて4人目
藤井 過去に五冠になられた方は時代を築いた偉大な棋士ばかりなので、光栄に思います。自分の場合、まだまだそういった立場に見合った実力が足りないと思う。今後、さらに実力をつけていく必要がある
――防衛戦とともにタイトルの積み上げが期待されるほか、順位戦もある
藤井 来月の順位戦は(最上位・A級への)昇級がかかる。悔いのないように戦えれば。翌年度からは防衛戦も始まる。しっかり実力を高めていければ。
――つねづね記録は意識しないといっていた。タイトルを重ねる意義をどう考えているか
藤井 これまでタイトル戦の対局を経験させてもらう中で、いろいろ成長できた部分がとても多くあったと思う。タイトルを取ること以上にそういった舞台での対局の経験を生かし、成長につなげていくことが大事なのかなと思う。
――王将戦の開幕前「成長していきたい」と言っていた。自分なりに成長、課題を感じたところは
藤井 渡辺明名人と2日制の対局は初めてだったが長い持ち時間で改めて対局してみて、中盤のバランスの取り方というあたりで、気付かない手を指されることが多かったので勉強になったと感じています。
――全タイトルを保持する「八冠」についての思いは
藤井 翌年度から防衛戦が始まることになりますし、具体的に目指すということではないのかなと思います。そういった経験を通して、実力を高めていくことで、そういったところに少しでも近付ければと思っています。
――タイトル戦の勝率が高い。タイトル戦と普段の対局で戦いやすさに違いは
藤井 自分としてはタイトル戦と普段の対局とで気持ちの違いはない。自分の場合、中盤で時間を使うことが多いので、2日制や、長い持ち時間は戦いやすいところがあります。
――これまで以上に藤井対策を強化される
藤井 自分としては何かやり方を大きく変えることはないので、今までやってきたことを積み上げていけたらと思っています。
――王将戦は4連勝のストレート勝ちだった
藤井 今回の番勝負を振り返ると、中盤は苦しい対局が多かった。4連勝は幸運。そういった苦しい局面でも粘り強く指せて、終盤に競り合いに持ち込めたのが良い結果につながったと思います。
――対局会場の東京・立川の印象は
藤井 対局室の前にも公園があり、富士山も見えて、都会でありながら自然が豊かなところだなと感じました。
――地元・愛知県瀬戸市をはじめ応援の声が多い
藤井 瀬戸市の方にはいつも応援していただいて励みになっています。そして今回、いい報告ができたのはうれしく思いますし、これからも地元の人にも楽しんでもらえるように頑張っていきます。
――子供時代、時間切れで負けて悔しい思いを経験した
藤井 そうですね(笑い)。(持ち時間が短い)早指しの大会が嫌いだったわけではないが、自分自身は長考派だったので、当時からじっくり考えるのが好きだったのかなというところがあります。
- >>連載「藤井聡太 ぶれない心」
王将戦七番勝負で渡辺明から王将のタイトルを奪い、史上4人目となる「五冠」の称号を手にした藤井聡太(19)。強さを支えるのは、中学生プロ棋士としてデビューしてから一貫して変わらない、将棋に向かう姿勢だ。駆け上がる王者を支えるぶれない心とともに、「五冠」経験者のみが知る、待ち受ける「壁」に迫る。(全3回)