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カタールの銀行プリカ悪用 決済6時間超の詐欺

ふらりと入店してきた外国人の男は、貴金属を次々と手に取っていった。総額1千万円相当にもなる商品を、男はカードで買うという。ただ、それには条件があって…。他人名義のカードを不正に使い、宝石や時計、衣料品などをだまし取る詐欺被害が、令和2年ごろから関西や関東など各地で相次いだ。捜査関係者によると、千葉県を拠点にしたスリランカ人グループの犯行とみられ、被害総額は3億円超に上る。使われたのは中東・カタールの銀行が発行したプリペイドカード(プリカ)。日本では見慣れないそのカードの決済システムを悪用した手口とは-。

Tシャツ姿の外国人客

神戸市の中心街、元町の貴金属店にスリランカ国籍の男(24)が入ってきたのは、2年9月中旬の正午前のことだった。男はショーケースに並ぶネックレスや指輪などを次々と手に取り、「彼女へのプレゼントだ」と言って笑顔をみせた。

Tシャツにジーパン姿。富裕層には見えないが、1つずつ吟味するように商品を選ぶ様子から、接客を担当していた女性店員は「中東のお金持ちで、宝石の知識を持つ客なのかもしれない」と考えたという。

最終的に男が選んだのは34点。最高額商品は約95万円の18金のネックレスで、総額では約1千万円に上った。会計時、男はカードを取り出し、こう説明した。「パパが作ってくれたカード。1回に1万5千円以下の決済しかできないんだ」

カタールのプリカで

男のカードは日本では見かけないものだったが、クレジットカードのようなデザインで、国際ブランドのロゴマークも印字されていた。決済端末に通してもエラーにはならない。

「爆買いの外国人なのだろう。海外のカードの仕組みはこういうものなのかな」。店員は指示されるままに、約1千万円の会計を1回1万5千円以下で分割した。結果、決済は777回にも上り、終わるまでに約6時間もかかった。その間、男は店内のソファに悠然と腰掛けていたという。

後日、売り上げが入金されず、店側はだまされたことに気づき、兵庫県警に相談。男は今年1月、この店での詐欺容疑で逮捕された。

県警によると、男が使っていたのはカタールの銀行が発行したプリカ。カタールの企業は、銀行口座を持たない外国人労働者へはプリカに入金する形で給料を支払うことが多いといい、出稼ぎを終えたスリランカ人労働者のカードが男の手に渡ったとみられる。

システムの穴を悪用

プリカは、あらかじめカードに入金し、その残高に応じて決済ができる仕組みだ。本来は、各店舗の決済端末に通せば、インターネットを通じて残高が照会され、それを超える金額の買い物はできない。

端末はクレジットカードの照会もできるが、通信料や時間削減のため、少額決済の際は照会を省く設定にすることもできる。ただ、この場合、プリカの残高が発行元のカタールの銀行に照会されないまま決済が完了する。男はこの穴を突き、実際には残高がゼロのプリカで、1千万円もの買い物をしたというわけだ。

同様のカードは国内で少なくとも約30枚確認されている。千葉県などに住むスリランカ人らが兵庫のほか東京、大阪、沖縄など各地で不正使用し、貴金属や衣料品などを詐取。質店などに売っていたという。

関与したのは男女10人以上で、被害総額は3億円以上。グループのメンバーは大阪府警や警視庁などにも逮捕されている。

不正利用が相次いだことから、このカードは昨年、カタールの銀行が使用禁止を通知。廃止されたが、キャッシュレス決済が主流となりつつある今、捜査関係者は「新たな手口のカード詐欺はいつ出てくるか分からない。不自然な取引に警戒が必要だ」と注意を呼びかけている。(鈴木源也)


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