「これはしつけや!」 幼稚になった“大人”による児童虐待をなくすために

    先月、民法822条の規定が削除される方向で法制審議会の専門部会が方針を固めたという報道がありました。民法822条のこんな規定です。「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」。いわゆる懲戒権の規定です。この規定、以前から児童虐待を助長するとして問題視されていました。児童虐待が疑われるケースで疑いをかけられた親がこの懲戒権を盾に抗議するケースも多々あったりして、結果、この懲戒権が児童虐待を助長する規定としてやり玉に挙がってしまったということなのです。

    適切な体罰かどうかの判断を、それを行う親に委ねてしまっては、行き過ぎが次々と発生してしまう(Getty Images)※画像はイメージです
    適切な体罰かどうかの判断を、それを行う親に委ねてしまっては、行き過ぎが次々と発生してしまう(Getty Images)※画像はイメージです

    真冬に真水のシャワーを長時間…

    小学校の先生からたくさんビンタをもらって育った世代の私としては、適切な体罰であれば良いのでは? と思ったりもするのですが、現実には適切な体罰かどうかの判断を、それを行う親に委ねてしまっては、行き過ぎが次々と発生してしまうんでしょうね。

    要は大人が幼稚になったってことなのかもしれません。ということで、私は民法822条の削除には賛成しています。今日はこの報道を機に児童虐待について考えてみたいと思います。

    今から約20年前の2001年8月、兵庫県尼崎市で6歳の少年が両親(父親は養父)に虐待され死亡しました。裁判では母親が生の素麺を少年の口に突っ込んだり、布団叩きで殴りつけたり、外出時には虐待の発覚を恐れて少年を縛り付けた上、粘着テープで口をふさいだりしていたことが明らかになりました。逃げ出そうとした少年に対して、養父が回し蹴りをしたのがとどめとなり、少年は死亡しました。裁判で母親は、「これはしつけや」と言っていたそうです。

    この事件は世間を震撼(しんかん)させましたが、児童虐待が収まることはありませんでした。その後も毎年のように児童虐待が発生し、2018年には東京であの目黒女児虐待事件が発生してしまうのです。ダイエットと称する過度な食事制限、真冬の中での長時間の真水のシャワー。司法解剖の結果、死亡した5歳女児の足は重度の凍傷となっていたそうです。

    父親(これもまた養父です)による苛烈な虐待に、世の多くの人が怒りに震えました。女児が記した反省ノートもまた、涙を誘いました。

    2019年に千葉県野田市で起こった野田小4女児虐待死事件も多くの人に衝撃を与えました。夜中に女児を起こして立たせたまま寝かせない、女児に浴室内で排便をさせ、その排泄物を女児に持たせて携帯で撮影する。これ、父親が自分の娘に行ったことなのです。それ以外にも女児が泣いている姿を映した動画を携帯に保存していたりと、もう完全に異常者です。

    女児は、学校のアンケートで助けを求めましたが、野田市教育委員会は、父親にこのアンケートのコピーの開示してしまい、さらに柏児童相談所は、女児を施設から自宅へ戻す決定を下してしまいます。そして、事件は起きてしまいました。


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