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後遺症起きても泣き寝入り? 現役医師が「コロナみなし陽性は即刻中止を」と怒るワケ

PRESIDENT Online

新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者となる同居家族に発熱などの症状が出た場合、検査なしで医師の判断によって感染者とみなす「みなし陽性」が一部の自治体で行われている。医師の木村知さんは「これはまっとうな診断法ではない。患者にとっても、医療機関にとっても、混乱やトラブル、負担を増やす愚策であることは明らかだ」という--。

※写真はイメージです 写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです 写真=iStock.com/takasuu

季節性インフルエンザでは日常的におこなわれてきた

オミクロン株の急拡大によって、岸田政権はこれまでの新型コロナに対する検査、診療体制を大きく変える決定をおこなった。「検査をおこなわなくとも臨床診断で新型コロナウイルス感染症と診断してよい」とするいわゆる「みなし陽性」を認める方針変更である。

これはPCRもしくは抗原検査という、客観的に判断できる方法によって診断していたこれまでの方針を根底からひっくり返すものだ。この方針変更は私たちにいかなる影響を及ぼすのか、本稿ではこのいわゆる「みなし陽性問題」について考えてみたい。

現在、新型コロナウイルス感染症は感染症法上では新型インフルエンザ等感染症という位置づけとなっており、入院勧告や外出自粛要請、就業制限といった厳しい措置が可能となっている。またこのカテゴリーに該当する感染症を診断した医師は、保健所に直ちに届け出を行う必要があるため、その感染者数は原則全数把握されることとなる。

この感染症法上の位置づけを緩和して季節性インフルエンザと同等の5類感染症とすべきという意見がある。その是非については2月2日PRESIDENT Online配信の拙稿「コロナでは休めない社会になるだけ……現役医師が「5類引き下げには大反対」と訴えるワケ」を参照していただきたい。「検査をおこなわなくとも臨床診断で感染者とする」との診断法は、これまで季節性インフルエンザに対してわれわれ臨床医が日常的におこなってきたものであるため、今回の「みなし陽性」は、診断の部分において新型コロナを季節性インフルエンザと同じ扱いにしようとするものとも言えよう。

「検査結果は絶対ではない」が常識

おそらく多くの方々は「季節性インフルエンザでも迅速抗原検査をおこなっていたではないか。そしてその検査結果によってタミフルやリレンザといった抗ウイルス薬が処方されていたではないか」と思われることだろう。もちろん“検査して処方”という型通りの診療をおこなう医師も少なくなかった。

だが拙著『病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ』(角川新書)にも書いたとおり、“検査結果は絶対ではない”というのがわれわれ実地医家の常識である。特に臨床症状はインフルエンザとの診断で矛盾がないか、むしろそれ以外の疾患は考えられない場合に、検査結果が陰性だからといってインフルエンザではないと診断することは、危険な誤りだとわれわれは考えている。

変異するウイルスに「みなし陽性」は適さない

具体的に言えば、季節性インフルエンザの流行期において、インフルエンザとの診断が確定している患者さんの同居家族が、最初に診断された人の発症日から数日以内にインフルエンザと診断して矛盾のない症状、すなわち発熱、関節痛、咳などを生じた場合は、仮に検査結果が陰性であっても感染者として診断するということは日常的に行っていた。

そしてこのような患者さんには、検査をいちいち行わずにインフルエンザ患者さんとして診断を確定し、必要に応じて抗ウイルス薬を処方もしたし、学校や職場に「インフルエンザ」との診断名で診断書を発行することも当然のように行っていたのである。

このように極めて感染の蓋然性の高い人については、検査をして陰性と出た場合などにかえって混乱を来してしまうこともあるため、あえて検査をしないという選択肢も十分にあり得たわけなのである。ただし、これは季節性インフルエンザという、毎シーズンわれわれ臨床医が長年経験してきて、その典型的な症状や臨床経過を熟知している疾患であるからこそ行える診断法であって、年間何度となくウイルスが変異したり、変異のたびに症状や重症度が変化するような感染症、そして何より無症状から肺炎にいたるまで多彩な症状を呈する疾患に応用することは適切とは言えないし、そもそも想定すらしていなかった。

同居家族の中で陽性と陰性が混在する可能性も…

つまり今回の「みなし陽性」を新型コロナに応用することは、想定外の使い方なのだ。新型コロナは本邦に上陸後2年を経過するなかで、変異を繰り返し続けているウイルスだ。その変異のたびに「特性」も変化し、主たる症状も典型的であると一概に断じきれない難しさがある。感染の可能性が高いといえる症状を何とするか、個々の医師でもバラつきが生じかねない。


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