「10万円超の最新iPhoneがなぜか1円」携帯キャリアがスマホの投げ売りに走る意外なカラクリ

    PRESIDENT Online

    5Gスマホユーザーは2.5倍もデータを使ってくれる

    新規に顧客を獲得したいとはいえ、最新のiPhone 13 miniを投げ売りするとは驚きだ。

    しかし、ここにもキャリアのしたたかな戦略が見えてくる。昨年、iPhone SE(第2世代)を投げ売りしていた時、キャリア幹部に話を聞いたところ「iPhone SE(第2世代)ではなく、本来ならiPhone 12 miniを売りたい。今更4Gスマートフォンを投げ売りしても仕方ない」というのだ。

    4Gスマートフォンと5Gスマートフォン、大した違いがないように見えるが、KDDIの決算資料によれば、5Gスマートフォンのユーザーは4Gスマートフォンのユーザーに比べて2.5倍もデータ通信量を消費するという。

    菅政権により、各キャリアは料金値下げを迫られ、UQモバイルやワイモバイルといったサブブランドや、「ahamo」などのオンライン専用プランを強化せざるを得なくなった。

    これらの安価な料金プランはデータ容量が数GBから20GBの小・中容量が中心だ。「データ容量が少ないから料金が安い」という立て付けになっており、4Gスマートフォンのユーザーがこうした料金プランに大挙して移転されては、キャリアにとってみれば収益に大きなダメージを被りかねない。

    キャリアはやや割高なプランで動画を見まくってほしい

    一方で、5Gスマートフォンに乗り換えてくれれば、高速通信に対応し、チップの処理速度も速く、画面も大きくて奇麗なので、ユーザーは大量にネットにアクセスして、NetflixやYouTubeなどの動画を見まくってくれる。結果として、サブブランドやオンライン専用プランではデータ容量が足りずに、メインブランドが提供する、やや高めの「データ使い放題プラン」に乗り換えてくれるというわけだ。

    auでは、NetflixやYouTube Premium、Apple Musicなどに加えて、Amazon Prime、先ごろ、3000円へ値上げが発表されたDAZNの使用料がセットになったプランを投入するなど、コンテンツをお得に見られるようにしつつ、データ通信量を稼ごうとしている。

    キャリアにとってみれば、値下げ圧力で通信料収入の減少が危惧される中、通信料収入を上げるには5Gスマートフォンを早期に普及させる必要がある。そのエンジンとして期待されているのがiPhone 13 miniの1円販売というわけだ。

    1円販売の条件にはもうひとつ「新規契約(22歳以下)」という条件をつけているところも多い。iPhoneをあまり利用しないユーザーを獲得しても、キャリアにとってもメリットは低い。むしろ、LINEやInstagramといったSNSや、YouTubeやTikTokなどの動画を視聴し、データ通信量を大量に利用するであろう22歳以下の若い年齢層をターゲットにした方が収益増を期待できるというわけだ。

    年度末はスマホデビューの絶好のタイミング

    例年、スマートフォン業界は2月から3月にかけてが1年の中で商戦期といわれている。

    卒業、入学、進学、就職など、学生や新社会人が、こぞってスマートフォンデビュー、あるいはキャリアを乗り換えたりする需要が一気に高まるのだ。

    「これまで親がスマホの通信料金は支払っていた」という子供が社会人デビューするとなれば、新しいスマートフォンを購入するとともに、親とは別のキャリアを契約することにもなるのだ。

    つまり、iPhone 13 miniの1円販売はこれからが活況になってくる可能性が高い。もしかするとiPhone 13 mini以外の機種にも派生する可能性もあるし、さらにお得な販売方法が登場してくることもあり得るだろう。

    過去にも1円やゼロ円の販売が広がったが、総務省が待ったをかけ、事業法が改正されて今のルールに落ち着いてきた。

    ここ最近、広がるiPhoneの1円販売について、KDDIの高橋誠社長は「基本的に事業法の範囲内で対応しており、端末価格は代理店が設定している。お客様は端末をお買い求めになるときに本体価格をとても重視していると感じている」とコメント。キャリアではなく、販売店側が主導して、1円販売を展開しているとのことだ。

    iPhoneを定期的に買い換えたい人や、この春スマートフォンデビューを予定している学生や新社会人は、ぜひとも、家電量販店やキャリアショップで、お得にiPhoneを「レンタル」するといいだろう。

    石川 温(いしかわ・つつむ)

    ジャーナリスト

    1998年、日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、月刊誌『日経トレンディ』編集記者に。2003年に独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、テレビ、雑誌で幅広く活躍。

    (ジャーナリスト 石川 温)


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)