こうした熱意から出発した事業を現在地まで導いたのは徹底したロジックだ。鉄道中心の交通網には駅から離れた場所への移動が難しいという問題があるが、同じような時間帯に大量の乗客がいても時間通りに安い料金で運べる強みもある。それならば鉄道中心の交通網を作り直すのではなく、駅と目的地の間に数多くのポートを配置してマイクロモビリティを使えるようにし、網の目をさらに密にしようという筋道だ。
理想のモビリティの姿をつかみきれなかった時期には、バイクなども含めた7種類もの車両を想定し、投資家に対して「まだどれが一番いいかは分からないんですけど」などとプレゼンしていたという。そこからあえて、認知度が低く、法改正まで必要な電動キックボードにこだわってきたことにも理由がある。米国視察の際に数多くの住民がシェアサイクルより2~3倍も料金が高い電動キックボードを使う理由について「こっちの方が楽しい」と話していたことだ。「人間にとって乗り心地というのは根本的に大事な要素だと気づいた。事業のアイデアは結構理詰めで考えるタイプ」という。
岡井氏は今後の展開について「2023年には全国展開できると考えている。高齢者も乗れるマイクロモビリティについてはさらに公的な取り組みが必要になるが、電動キックボードでやったことをもう一度やるだけ」と先を見据えている。