親露派、住民をロシアに避難 ウクライナは攻撃否定

    【モスクワ=小野田雄一】ウクライナ東部の一部を実効支配する親ロシア派武装勢力は18日、「ウクライナ軍の攻撃開始が近い」と主張し、女性や子供らを中心に住民を露南部ロストフ州に避難させると発表した。タス通信が伝えた。一方、ウクライナ軍高官は同日、「親露派支配地域への攻撃計画はない」とするビデオ声明を発表、情勢を悪化させるための親露派による虚偽情報だと非難した。

    ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との衝突で損傷したとされる建物=15日、ウクライナ東部(ゲッティ=共同)
    ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との衝突で損傷したとされる建物=15日、ウクライナ東部(ゲッティ=共同)

    避難はロシアによるウクライナ侵攻の前触れだとする観測が広まり、タス通信によると、モスクワ市場では同日、通貨ルーブルの対ドルレートが急落した。

    タス通信によると、親露派側は19日未明(日本時間同日朝)までに3千人以上の住民が避難したと発表。親露派支配地域の都市で少なくとも2回の爆発が起きたとも主張している。

    露下院のボロジン議長は19日、自身のSNS(会員制交流サイト)に「ロシアは戦争を望んでいないが、親露派支配地域に住む露国民の生命が脅かされれば、ロシアは彼らを守るために立ち上がる」と書き込んだ。ロシアは2019年から親露派支配地域の住民に露国籍を付与する政策を進め、昨年12月までに約72万人が取得したとされる。

    親露派側は今月17日、ウクライナ軍から大規模な砲撃を受け、反撃したと発表。18日にも攻撃を受けたと主張した。ウクライナ側は攻撃を否定している。

    ペスコフ露大統領報道官によると、プーチン露大統領は避難住民に対する宿泊施設や食事、医療の提供などを露政府に指示した。

    ウクライナ情勢が緊迫する中、米国はロシアが親露派への攻撃をでっち上げ、ウクライナ侵攻の口実にする恐れがあると警戒。ロシアも、米国やウクライナがロシアを戦争に引き込むために軍事挑発する可能性があると主張してきた。

    ウクライナ東部では、同国の親露派政権が崩壊した14年の政変を機に、ロシアに支援された親露派勢力が武装蜂起。一部地域を実効支配下に置いた。奪還を目指すウクライナ軍との戦闘でこれまでに計約1万4千人が死亡したとされる。


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