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阪神大震災が生んだ耐震シェルター、震度7にも驚異の粘り

仕口ダンパーの開発に区切りがついた平成15年、「変形能力が高く母材(柱や梁の胴体部分)の強度をフルに活用する仕口をもつ軸組(骨組)を実現できるか」という課題に直面した。つまり改修工事でなく新築工事でもそのような軸組を作れないのか、ということだ。木造軸組の構造的弱点が仕口であることは知られていた。確かに輸入技術では母材に多数の孔(穴)を開けてボルトを貫通する接合の方法はある。日本古来の接合法はノミやカンナを用いて伝統的な仕口を経験と勘で精度よく作り美しく見せる「技」である。しかし、両者とも母材の強度を十分に生かした接合法とは言いがたい。木材の仕口は木材同士の「めり込み」と「摩擦」によって応力を伝達するという原点に立ち返り、「技」を定量化(数式化)し、簡易なマニュアルに仕上げることが必須だ。そこに知人のイギリス人建築家がヒントをくれた。スコットランドの北海油田にある鉄骨造のコンテナハウスをつなぐ住宅、これを日本の木材と軸組工法で工業生産品として作れないかというものだった。

耐震シェルター「j.Pod(小さな箱)」の効果(図中の数字の単位はミリ)
耐震シェルター「j.Pod(小さな箱)」の効果(図中の数字の単位はミリ)

腹案を共同で提案図にとりまとめ15年度日本建築学会の主催する技術アイデアコンペに応募した結果、この「j.Pod(小さな箱)」の提案が入選し一定の評価を得た。しかし、アイデアがよくても実現普及するためのハードルは高い。高性能の剛節フレーム(リブフレーム)はどうすれば安価にしかも美しく作れるか?という模索を繰り返す間にいろんな人の協力を得た。京都大や兵庫県からは「森林資源の有効活用」の面からスギ間伐材の建築構造材への応用につき試行建築の設計・施工など支援を受けた。部分実験と試験施工を繰り返した結果、現代的なありふれた素材(薄鉄板と釘(くぎ))をスマートな形で組み合わせるという単純なディテールに行き着いたのが18年。間伐材の構造体利用も可能だ。

構造体(空間)としての性能は複数のリブフレームを固定してつなぐ方法が重要で、実大破壊実験をしなければ空間としてどれだけの耐力と変形性能かわからない。そこへ国土交通省の地域木造住宅市場活性化推進事業(20年)に、大阪市と大阪府から地震対策としての「耐震シェルターの開発」で応募推薦を得た。材料はスギ間伐材、仕口と連結法を改良した試作品を鉄工所町工場と宮大工の手作りで製作、日本建築総合試験所に実大モデルの破壊実験を委託した。そこでj.Pod耐震シェルターの驚異的な粘り強さが実証された。壁のない四畳半一室のPod上に120m2の瓦屋根住宅を乗せて震度6強の地震動を与えても潰れないということだ。その後、数十件の実施適用を通じて釘や木ネジから金物部品まですべての改良(工場製作)と現場施工の合理化を繰り返した。j.Pod技術基準書が現在の形に落ち着いたのは26年春、同時に限界耐力計算による木造軸組の簡易計算マニュアル(大阪府)も更新された。(一級建築士 樫原健一)


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